21世紀における微量元素研究(Metallomics)への期待と展望:私的提案

金属は, この地球の時空にユビキタスに存在し, 人類が誕生して以来人は金属とともにあった. 人が道具として初めて金属を使った正確な時はわかっていないが, 紀元前3800年頃の鉛の小像が大英博物館に飾られていることを見ると, 数千年前にさかのぼると考えられる. 金, 水銀, ヒ素, 銀や鉛はギリシャ・ローマ時代にはすでに使われていた. 銅と錫(そしてアンチモン)からなる青銅を用いた文明は, 紀元前3500年頃に青銅器時代をつくり, 鉄の製造は1500年頃からはじまり, 鉄器時代として開花した. 科学的な意味での元素の発見は, 18世紀に急激にはじまり, 19世紀で頂点を迎え, その後, 今日われ...

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Bibliographic Details
Published inBIOMEDICAL RESEARCH ON TRACE ELEMENTS Vol. 20; no. 4; pp. 257 - 262
Main Author 桜井, 弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本微量元素学会 2009
Subjects
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ISSN0916-717X
1880-1404
DOI10.11299/brte.20.257

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Summary:金属は, この地球の時空にユビキタスに存在し, 人類が誕生して以来人は金属とともにあった. 人が道具として初めて金属を使った正確な時はわかっていないが, 紀元前3800年頃の鉛の小像が大英博物館に飾られていることを見ると, 数千年前にさかのぼると考えられる. 金, 水銀, ヒ素, 銀や鉛はギリシャ・ローマ時代にはすでに使われていた. 銅と錫(そしてアンチモン)からなる青銅を用いた文明は, 紀元前3500年頃に青銅器時代をつくり, 鉄の製造は1500年頃からはじまり, 鉄器時代として開花した. 科学的な意味での元素の発見は, 18世紀に急激にはじまり, 19世紀で頂点を迎え, その後, 今日われわれが使っている周期表の残りの元素が発見された. 1940年代になると, 核分裂反応によりつくられた人工超ウラン元素が地球上に存在するようになった[1]. 2009年9月現在において, 名称が与えられている周期表上の元素数は, 111である[2]. 道具としての金属の利用は, 人類に高度な文明をもたらしたが, 一方で金属による障害をも受けざるを得なくなった.
ISSN:0916-717X
1880-1404
DOI:10.11299/brte.20.257