亜鉛生物学と亜鉛シグナルの基礎知識

「はじめに」 亜鉛は生命の維持に必須である. ヒトの体内での存在量としては鉄の次に多い必須微量元素であるが, 亜鉛が生命維持の必須であることの理由にはあまり注目を集めてこなかった. 本稿では, 「なぜ亜鉛は生命に必要であるのか?」, 亜鉛生物学と亜鉛シグナルの基礎的な情報と研究の系譜をふまえて概論したい. 「亜鉛生物学の歴史」 亜鉛の金属の発見は他の主要な金属と比べるとその歴史は新しく, ドイツ人のアンドレアス・マルクグラーフが1746年に報告したのが最初とされている. 日本以外の漢字文化圏では「シン」の文字で表しているが, 日本では寺島良案が和漢三才図会で「亜鉛」と記して紹介しており, この...

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Published inBIOMEDICAL RESEARCH ON TRACE ELEMENTS Vol. 26; no. 1; pp. 1 - 6
Main Author 深田, 俊幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本微量元素学会 08.05.2015
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ISSN0916-717X
1880-1404
DOI10.11299/brte.26.1

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Summary:「はじめに」 亜鉛は生命の維持に必須である. ヒトの体内での存在量としては鉄の次に多い必須微量元素であるが, 亜鉛が生命維持の必須であることの理由にはあまり注目を集めてこなかった. 本稿では, 「なぜ亜鉛は生命に必要であるのか?」, 亜鉛生物学と亜鉛シグナルの基礎的な情報と研究の系譜をふまえて概論したい. 「亜鉛生物学の歴史」 亜鉛の金属の発見は他の主要な金属と比べるとその歴史は新しく, ドイツ人のアンドレアス・マルクグラーフが1746年に報告したのが最初とされている. 日本以外の漢字文化圏では「シン」の文字で表しているが, 日本では寺島良案が和漢三才図会で「亜鉛」と記して紹介しており, この記述が日本で亜鉛に負のイメージを与えるきっかけになったともいわれている. 亜鉛が生命に必須であることを示す報告は, 1869年にコウジカビ(Aspergillus niger)を用いた研究が最初であるとされている.
ISSN:0916-717X
1880-1404
DOI:10.11299/brte.26.1