Transplant Oncologyから思惟する肝門部領域胆管癌に対する肝移植:技術的な切除可能性から腫瘍学的な根絶可能性へ

肝門部領域胆管癌は完全切除のみが治癒を期待し得る難治がんで,日本の肝胆膵外科が大肝切除と血管・膵合併切除などを組み合わせ拡大手術を強力に推進し,予後を劇的に改善してきた.しかし診断時に切除困難・不能な患者の成績は極めて不良で,標準治療の薬物療法では5年生存率は10%未満に留まる.近年,欧米では厳格な選択基準のもと切除不能症例に集学的治療の一環として肝移植が行われている.米国では2009年に通常の移植適応として承認され,2012年時点に行われた多施設共同研究では5年無再発生存率65%と極めて良好な予後であった.筆者らが日本から提唱したtransplant oncologyという概念から肝門部領域...

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Published in胆道 Vol. 37; no. 2; pp. 175 - 184
Main Author 日比, 泰造
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本胆道学会 31.05.2023
日本胆道学会
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ISSN0914-0077
1883-6879
DOI10.11210/tando.37.175

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Summary:肝門部領域胆管癌は完全切除のみが治癒を期待し得る難治がんで,日本の肝胆膵外科が大肝切除と血管・膵合併切除などを組み合わせ拡大手術を強力に推進し,予後を劇的に改善してきた.しかし診断時に切除困難・不能な患者の成績は極めて不良で,標準治療の薬物療法では5年生存率は10%未満に留まる.近年,欧米では厳格な選択基準のもと切除不能症例に集学的治療の一環として肝移植が行われている.米国では2009年に通常の移植適応として承認され,2012年時点に行われた多施設共同研究では5年無再発生存率65%と極めて良好な予後であった.筆者らが日本から提唱したtransplant oncologyという概念から肝門部領域胆管癌を思惟すると,腫瘍学的な根絶可能性=oncological eliminabilityを達成すべく切除と肝移植は相補的な役割を担うと考えられる.本邦が先導者としての使命を果たすことが期待される.
ISSN:0914-0077
1883-6879
DOI:10.11210/tando.37.175