東北地方にある特異な泉質の温泉とそれらの皮膚科的適用

東北地方北部にある特異な泉質の3温泉において, それぞれの泉質に応じて, それらを各種の皮膚疾患患者に適用し, 良効を得ている. 1)玉川温泉:十和田湖と田沢湖とを結ぶ直線の中間点の処に位置し, 海抜700~800mの高山地帯で, 比較的低気圧, 高紫外線の環境である. 源泉は強酸性硫黄泉でpH1.3, その成分は, ほとんど硫酸と塩酸であり, 硫化水素含有量は意外と少ない1). その42℃の浴泉に因り, 皮膚は刺激され, 皮膚に酸性硫黄泉浴独特の反応を招来する. すなわち:「毒を出す」, 「かすける」, 「痂皮形成」, 「よる」などの経過をたどる2). ことに, その痂皮形成は, 厚い硬い痂...

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Published in日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 59; no. 2; pp. 121 - 125
Main Author 野口, 順一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本温泉気候物理医学会 1996
日本温泉気候物理医学会
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ISSN0029-0343
1884-3697
DOI10.11390/onki1962.59.121

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Summary:東北地方北部にある特異な泉質の3温泉において, それぞれの泉質に応じて, それらを各種の皮膚疾患患者に適用し, 良効を得ている. 1)玉川温泉:十和田湖と田沢湖とを結ぶ直線の中間点の処に位置し, 海抜700~800mの高山地帯で, 比較的低気圧, 高紫外線の環境である. 源泉は強酸性硫黄泉でpH1.3, その成分は, ほとんど硫酸と塩酸であり, 硫化水素含有量は意外と少ない1). その42℃の浴泉に因り, 皮膚は刺激され, 皮膚に酸性硫黄泉浴独特の反応を招来する. すなわち:「毒を出す」, 「かすける」, 「痂皮形成」, 「よる」などの経過をたどる2). ことに, その痂皮形成は, 厚い硬い痂皮が皮疹上に密着して形成され, 皮疹を痒感掻爬の暴力から保護する3),4). また, 泉水の乾燥作用と強度の酸性に因り, 皮膚上の病原性の細菌や真菌は殺菌される. この殺菌作用は, MRSAその他の耐性菌などでは, 抗生物質の投与よりは有効である5). 以上の諸作用に拠り, この浴泉は, 体質性神経性皮膚炎(ベニエ氏痒疹……いわゆるアトピー性皮膚炎), 痒疹類, 膿痂疹また真菌症などに有効である.
ISSN:0029-0343
1884-3697
DOI:10.11390/onki1962.59.121