ハンセン病施設における転倒要因の検討

国立療養所大島青松園では, これまで報告されてきた高齢者の転倒要因をもとに, 平成15年より生活場面での転倒予防に取り組んできた. しかし, 一般の高齢者に比べハンセン病者では, 幾多の疾患特有の障害を有しているために特別な対応が必要になることが予想される. 本研究は, ハンセン病による後遺症などに関する要因を明確にすることを目的として, 全国13カ所のハンセン療養所の平成15年から平成17年までの転倒・転落事例報告, および国立療養所大島青松園での転倒事例の要因を分析することで, ハンセン病者の転倒要因について検討した. 結果より, ハンセン病施設の入所者一般高齢障害者より転倒要因が高い状況...

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Published in医療 Vol. 60; no. 9; pp. 562 - 568
Main Authors 坪井, 章雄, 松尾, 弘美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 2006
国立医療学会
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.60.562

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Summary:国立療養所大島青松園では, これまで報告されてきた高齢者の転倒要因をもとに, 平成15年より生活場面での転倒予防に取り組んできた. しかし, 一般の高齢者に比べハンセン病者では, 幾多の疾患特有の障害を有しているために特別な対応が必要になることが予想される. 本研究は, ハンセン病による後遺症などに関する要因を明確にすることを目的として, 全国13カ所のハンセン療養所の平成15年から平成17年までの転倒・転落事例報告, および国立療養所大島青松園での転倒事例の要因を分析することで, ハンセン病者の転倒要因について検討した. 結果より, ハンセン病施設の入所者一般高齢障害者より転倒要因が高い状況にあるにもかかわらず, 同年代の高齢障害者とほぼ同様の転倒率であった. また, 転倒者の骨折率は, 在宅高齢者や老人ホーム入所者の調査に比べハンセン病施設入所者で低い結果が示された. このことは, バリアフリーなどの環境の整備によって, 転倒者の骨折率を低下させる可能性を示唆するものであった. 環境要因の調査では, 主に生活場所を中心にその動線上で転倒が多く, 誘因となる動作も移動・移乗時や物を取るなどの動作時, そして転倒発生時間は主な活動時間であることが示された. これは, 従来の報告と同様の状況でありハンセン病者特有の状況はみられなかった. また, 身体的要因分析でも従来の報告と同様に, 移動・移乗能力の低下によって転倒がおこりやすくなることや, 知的機能が低下することにより転倒への危険回避や安全性の確保などへの配慮などは行われなくなり, 転倒をおこしやすくなることが考えられた. 一方, 上肢機能と関連性の高い食事動作項目で有意な関連が示された. このことは, ハンセン病者の手指の変形や, 切断, 麻痺などによる上肢機能の低下が転倒との関連性を示唆するものであった.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.60.562