再生不良性貧血に伴ったムコール症による塊状肝壊死の1剖検例

再生不良性貧血の経過中ムコール症を併発し,肝に塊状壊死をきたして死亡した症例を報告した.症例.27歳,男,学生.3年来再生不良性貧血の診断で蛋白同化ホルモン,輸血,プレドニゾロンなどで治療中弛張熱が出現し,これを主訴として入院した.経過中鼻出血,右肺門部異常陰影,右横隔膜挙上,右上腹部圧痛などがみられ,各種の抗生物質,ステロイドホルモンなどで治療を施したが,すべて無効で,入院27日で死亡した. 剖検所見は骨髄の低形成,出血傾向,ヘモジデローシスに加え,肝右葉に14×13cmの壊死巣があり,菌糸中隔を欠く幅広い真菌が多数みられ,右肺動脈血栓,肺,小腸にも同様の真菌が認められ,ムコール症と診断され...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in肝臓 Vol. 22; no. 9; pp. 1293 - 1298
Main Authors 古城, 秀明, 安部, 明郎, 加藤, 由美子, 浅尾, 武士, 沓掛, 伸二, 畑, 岩雄, 島野, 毅八郎, 本間, 定
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 1981
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.22.1293

Cover

More Information
Summary:再生不良性貧血の経過中ムコール症を併発し,肝に塊状壊死をきたして死亡した症例を報告した.症例.27歳,男,学生.3年来再生不良性貧血の診断で蛋白同化ホルモン,輸血,プレドニゾロンなどで治療中弛張熱が出現し,これを主訴として入院した.経過中鼻出血,右肺門部異常陰影,右横隔膜挙上,右上腹部圧痛などがみられ,各種の抗生物質,ステロイドホルモンなどで治療を施したが,すべて無効で,入院27日で死亡した. 剖検所見は骨髄の低形成,出血傾向,ヘモジデローシスに加え,肝右葉に14×13cmの壊死巣があり,菌糸中隔を欠く幅広い真菌が多数みられ,右肺動脈血栓,肺,小腸にも同様の真菌が認められ,ムコール症と診断された. 重篤な疾患々者の末期感染症としてのムコール症の報告は散見されるが,肝に塊状壊死をきたしたものは極めて少ない.このような症例について,その臨床経過,剖検所見を記載し考察を加えた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.22.1293