直腸間膜内の膿瘍形成に対して直腸内腔へのドレナージ術を行った後に根治切除した直腸癌の1例

症例は75歳の男性で,肛門痛を主訴に当院を受診した.造影CTで直腸RaRbに造影効果を伴う不整な壁肥厚像と左側主体の直腸壁外の膿瘍形成を認めた.まず,局所の感染コントロール目的に腰椎麻酔下に膿瘍の切開ドレナージ術を施行した.直腸癌の播種の可能性を考慮し,腫瘍肛門側の直腸粘膜を切開し直腸内腔へ排膿した.膿瘍が軽快した後に根治手術を行い,膿瘍を形成していた瘢痕組織も含めen blocに切除した.病理学的に腫瘍はpT3(A)であったが,剥離面への腫瘍の露出はなくRM0であった.術後5年無再発生存中である.膿瘍形成を伴う直腸癌は肛門周囲膿瘍と同様のドレナージを行うと癌腫が肛門周囲組織へ播種し根治性を損...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 52; no. 6; pp. 319 - 326
Main Authors 新井, 利幸, 田中, 征洋, 関, 崇, 陸, 大輔, 田畑, 光紀, 平松, 聖史, 雨宮, 剛, 崔, 尚仁, 藤枝, 祐倫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 01.06.2019
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2018.0124

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Summary:症例は75歳の男性で,肛門痛を主訴に当院を受診した.造影CTで直腸RaRbに造影効果を伴う不整な壁肥厚像と左側主体の直腸壁外の膿瘍形成を認めた.まず,局所の感染コントロール目的に腰椎麻酔下に膿瘍の切開ドレナージ術を施行した.直腸癌の播種の可能性を考慮し,腫瘍肛門側の直腸粘膜を切開し直腸内腔へ排膿した.膿瘍が軽快した後に根治手術を行い,膿瘍を形成していた瘢痕組織も含めen blocに切除した.病理学的に腫瘍はpT3(A)であったが,剥離面への腫瘍の露出はなくRM0であった.術後5年無再発生存中である.膿瘍形成を伴う直腸癌は肛門周囲膿瘍と同様のドレナージを行うと癌腫が肛門周囲組織へ播種し根治性を損なう可能性がある.本症例は,主病変肛門側の直腸を切開し直腸内腔へ排膿を行い,待機的に膿瘍腔も含めて切除し良好な転帰が得られ,かつ肛門を温存することが可能であった.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2018.0124