ホスファチジルグリセロールとシアノバクテリア—光合成に関与するリン脂質の機能
「1. はじめに」作物の生育や収穫を支える肥料には, リン元素を含む種々の必須栄養成分が含まれている. リン欠乏は白化や未熟化などを伴う深刻な生育阻害を示すため, 無機リンまたは有機リンの形態で土壌や水耕で生育ステージに応じて与える必要がある. どちらの施肥方法であっても, リン元素は植物体内での代謝を経てリン脂質や核酸などの構成因子として活用される. 一方で, 無機リンの調達は採掘に大きく依存しており, 一部の資源国に頼らざるを得ないことがこれからの農業における潜在的なリスクと考えられている. また, 土壌における有機リンの詳細な組成は, 菌叢をよく反映していると考えられ, 質的な評価の指標...
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Published in | 日本農薬学会誌 Vol. 48; no. 2; pp. 193 - 195 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本農薬学会
20.08.2023
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ISSN | 2187-0365 2187-8692 |
DOI | 10.1584/jpestics.W23-38 |
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Summary: | 「1. はじめに」作物の生育や収穫を支える肥料には, リン元素を含む種々の必須栄養成分が含まれている. リン欠乏は白化や未熟化などを伴う深刻な生育阻害を示すため, 無機リンまたは有機リンの形態で土壌や水耕で生育ステージに応じて与える必要がある. どちらの施肥方法であっても, リン元素は植物体内での代謝を経てリン脂質や核酸などの構成因子として活用される. 一方で, 無機リンの調達は採掘に大きく依存しており, 一部の資源国に頼らざるを得ないことがこれからの農業における潜在的なリスクと考えられている. また, 土壌における有機リンの詳細な組成は, 菌叢をよく反映していると考えられ, 質的な評価の指標に用いられることもある. しかし, リン脂質の機能についてはわかっていることが限定的であり, 研究手法も限られている. 本稿では, こうしたリン脂質研究の技術的な困難に対応することでリン脂質の一種であるホスファチジルグリセロール(PG)の機能に迫った新しいアプローチを中心に紹介し, 最後に簡単ではあるが新たにリン欠乏を緩和する新しい脂質(グルクロン酸糖脂質)が見出されたことに触れる. |
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ISSN: | 2187-0365 2187-8692 |
DOI: | 10.1584/jpestics.W23-38 |