診療ガイドラインに基づいた当院における過去11年間の急性胆嚢炎緊急手術症例の検討

「急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン」では,早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術を推奨している。今回,このガイドラインを検証するため,当院における急性胆嚢炎に対する過去11年間(1998年1月~2008年12月)の緊急手術症例を前期(1998年1月~2005年12月)と後期(2006年1月~2008年12月)とに分けてretrospectiveに検討した。緊急手術の総数は85例,年平均で前期4.6例,後期16例であった。発症から手術までの日数は前期2.5日,後期2.0日へ,合併症は前期10.8%から後期8.3%へ,腹腔鏡手術における開腹移行率も前期21.4%から後期6.9%へとそれぞれ低下した。腹腔鏡手...

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Published inNihon Fukubu Kyukyu Igakkai Zasshi (Journal of Abdominal Emergency Medicine) Vol. 30; no. 3; pp. 427 - 432
Main Authors 里見, 大介, 山本, 海介, 森嶋, 友一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 2010
Japanese Society for Abdominal Emergency Medicine
Subjects
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.30.427

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Summary:「急性胆管炎・胆嚢炎の診療ガイドライン」では,早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術を推奨している。今回,このガイドラインを検証するため,当院における急性胆嚢炎に対する過去11年間(1998年1月~2008年12月)の緊急手術症例を前期(1998年1月~2005年12月)と後期(2006年1月~2008年12月)とに分けてretrospectiveに検討した。緊急手術の総数は85例,年平均で前期4.6例,後期16例であった。発症から手術までの日数は前期2.5日,後期2.0日へ,合併症は前期10.8%から後期8.3%へ,腹腔鏡手術における開腹移行率も前期21.4%から後期6.9%へとそれぞれ低下した。腹腔鏡手術と開腹手術の比較では,後期における腹腔鏡手術の出血量は46g,開腹手術では246gと有意に差を認めた(p<0.0001)。術後在院日数でも後期の腹腔鏡手術は開腹手術と比べ有意に短かった(6.8vs11.7日p<0.0001)。また,後期における腹腔鏡手術に関して,緊急手術と待機手術の比較を行うと,出血量,手術時間,術後在院日数で有意差はないものの,出血量は緊急手術で少ない傾向をみた。以上より,急性胆嚢炎に対し,早期に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行うことで待機手術や開腹手術と比べ,出血量や術後在院日数の点で優位な結果が示された。したがって,急性胆嚢炎症例は,患者の全身状態が許す限り早期の腹腔鏡下胆嚢摘出術が推奨されると考える。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.30.427