陳旧性骨粗鬆症性椎体骨折例のX線変化および身体機能の特徴

【目的】骨粗鬆症に伴う椎体骨折 (VF)は、社会の高齢化に伴い増加しており、骨折リエゾンサービスも展開されている。しかし、VF後の脊柱骨盤矢状面アライメントの変化や身体機能の特徴を調査した報告は限られる。本研究の目的は、陳旧性VF例の X線変化および身体機能の特徴を検討し、QOL低下予防に向けた理学療法の一助とすることである。 【方法】対象は、2013年から2022年の間に大規模農業地区で行った一般住民脊柱検診に参加した中高齢女性216名 (平均年 齢67.8±5.8歳)とした。方法は、標準的な脊柱骨盤矢状面アライメントのX線評価項目であるTK、LL、SVA、PI、PT、SSを計測し、さらに日...

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Published inJapanese Society of physical therapy for prevention (supplement) Vol. 2.Suppl.No.1; p. 159
Main Authors 千葉, 恒, 小林, 徹也, 妹尾, 一誠, 今井, 充, 横濱, 響, 菅原, 敏暢, 清水, 睦也, 杉澤, 裕之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本予防理学療法学会 31.03.2024
Japanese Society of physical therapy for prevention
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ISSN2758-7983
DOI10.57304/jsptpsuppl.2.Suppl.No.1.0_159

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Summary:【目的】骨粗鬆症に伴う椎体骨折 (VF)は、社会の高齢化に伴い増加しており、骨折リエゾンサービスも展開されている。しかし、VF後の脊柱骨盤矢状面アライメントの変化や身体機能の特徴を調査した報告は限られる。本研究の目的は、陳旧性VF例の X線変化および身体機能の特徴を検討し、QOL低下予防に向けた理学療法の一助とすることである。 【方法】対象は、2013年から2022年の間に大規模農業地区で行った一般住民脊柱検診に参加した中高齢女性216名 (平均年 齢67.8±5.8歳)とした。方法は、標準的な脊柱骨盤矢状面アライメントのX線評価項目であるTK、LL、SVA、PI、PT、SSを計測し、さらに日本骨粗鬆症学会基準による椎体高評価からVFを判定 (34例)し骨折群 (FG)および非骨折群 (nFG)の2群に分類し、年齢をマッチングさせたそれぞれ34例 (平均年齢73歳)を解析対象とした。身体機能評価は、体幹自動 (BET)および他動 (PP)伸展可動域、等尺性筋力計を用いた体幹・下肢筋力、歩行時の姿勢評価である立位歩行体幹前傾角 (dTIA)、腰痛VAS、健康関連QOL (SF-36)、Body Mass Indexを評価した。なお、一般住民検診の性質上、対象に新鮮骨折例は含まれていない。統計的解析は、各評価項目を2群間で比較し、さらにVFの有無に対するロジスティック回帰分析にて関連要因も検証した。いずれも有意水準は5%とした。 【結果】VF34例の内訳は、1椎体のVFが23例、2椎体のVFが7例、3椎体以上のVFが4例であった。X線項目では、LL (FG30.9 °vs nFG41.1°;p=0.015)、SS (FG23.1°vs nFG31.4°;p=0.003)、 PT (FG30.3°vs nFG23.4°;p=0.004)で、身体機能項目では、 BET (FG6.5cm vs nFG11.0cm;p=0.019)、PP (FG25.5cm vs nFG29.0cm;p=0.015)、dTIA (FG6.2°vs nFG4.0°;p=0.020)で有 意差を認めた。SF-36下位尺度は、身体機能 (FG41.1 vs nFG48.1;p=0.045)で有意差を認めた。筋力はいずれも2群間で有意差を認めなかった。ロジスティック回帰分析では、BET (オッズ比0.90;p=0.014)のみが有意な関連要因として抽出された。 【考察】VF後は腰椎骨盤アライメントが後弯化し、体幹伸展の可動域制限、歩行時の体幹前傾増大に加え、QOLも低下していることが明らかとなった。VF例でも腰椎可動性の維持により QOL低下予防の可能性が報告されている。そのためには、骨粗鬆症の啓蒙や薬物治療に加え、体幹伸展可動域を維持するような身体機能面への対処も必要と考えられた。 【倫理的配慮】本調査は、旭川医科大学倫理委員会で承認され (承認番号 372)、参加者からは文書による同意を得た。
Bibliography:YO-03-1
ISSN:2758-7983
DOI:10.57304/jsptpsuppl.2.Suppl.No.1.0_159