脳卒中者における回復期リハビリテーション病棟退院後の転倒に関連する因子の検討

【はじめに、目的】転倒は要介護状態悪化の主な原因として報告されており、脳卒中者の転倒予防は重要といわれている。先行研究において、回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中者を対象とした転倒に関する報告は多いが、退院後の報告は少ない。そのため本研究では、脳卒中者における回復期リハビリテーション病棟退院後の転倒発生の有無と、退院時の身体機能および認知・高次脳機能、環境要因の関連性を調査した。これにより、退院後の転倒予防策を考慮するための知見を得ることを目的とした。【方法】対象は研究の協力を得られた4施設において回復期リハビリテーション病棟から自宅に退院した脳卒中者84例とした。対象者の包含基準は、...

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Published inJapanese Society of physical therapy for prevention (supplement) Vol. 1.Suppl.No.2; p. 88
Main Authors 鈴木, 佳樹, 田口, 涼太, 濱中, 康治, 小川, 秀幸, 松井, 有希, 木村, 鷹介, 阿部, 祐樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本予防理学療法学会 01.12.2022
Japanese Society of physical therapy for prevention
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ISSN2758-7983
DOI10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.2.0_88

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Summary:【はじめに、目的】転倒は要介護状態悪化の主な原因として報告されており、脳卒中者の転倒予防は重要といわれている。先行研究において、回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中者を対象とした転倒に関する報告は多いが、退院後の報告は少ない。そのため本研究では、脳卒中者における回復期リハビリテーション病棟退院後の転倒発生の有無と、退院時の身体機能および認知・高次脳機能、環境要因の関連性を調査した。これにより、退院後の転倒予防策を考慮するための知見を得ることを目的とした。【方法】対象は研究の協力を得られた4施設において回復期リハビリテーション病棟から自宅に退院した脳卒中者84例とした。対象者の包含基準は、退院時に歩行自立可能であった者、Mini-Mental State Examination(以下MMSE)19点以上であった者とした。転倒発生の有無は退院後3ヶ月後に郵送にてアンケート調査をした。欠損情報があった者を除いた、対象者は78例(64.3±13.2歳)であった。その他の調査項目として基本属性や医学的情報に加え、退院時のBrunnstrom recovery stage、感覚障害の有無、バランス能力の良否、認知機能低下の有無、至適歩行速度、入院中の転倒発生の有無、環境要因をカルテより調査した。バランス能力の良否は、Berg balance scaleを使用して46点未満を基準とした。認知機能低下の有無は、MMSEを使用して26点未満、至適歩行速度は時速0.8km 未満を基準とした。統計解析では、退院後転倒群と非転倒群の各 調査項目の差異を比較検討した。また、ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を用いて、退院後の転倒に関連する要因を抽出した。【結果】退院3ヶ月後の転倒者数は24名、転倒率は30.8%であった。転倒群の平均年齢は70.6±10.1歳、非転倒群の平均年齢は61.4±13.5歳であった。転倒群と非転倒群で有意差が認められた項目は年齢、認知機能低下の有無、バランス能力の良否、至適歩行速度、入院中の転倒発生の有無であった。ロジスティック回帰分析の結果、退院後の転倒と有意に関連していた要因は、至適歩行速度(OR:10.174、95%CI:1.451-71.346)、入院中の転倒発生の有無(OR:4.352、95%CI:1.060-17.860)であった。【結論】退院後の脳卒中者の転倒には、退院時の至適歩行速度不足、入院中の転倒発生の有無が有意に関連することが示された。今回の結果から、脳卒中者において、至適歩行速度不足、入院中の転倒歴を有する者は、より退院後の転倒リスクが高いことを医療者、家族が考慮する必要がある。入院中の転倒から、原因を推測した環境整備が転倒予防に繋がると考える。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は筑波大学および各研究協力機関の倫理審査委員会の承認を得たうえで、ヘルシンキ宣言に則って実施した。
ISSN:2758-7983
DOI:10.57304/jsptpsuppl.1.Suppl.No.2.0_88