脳性麻痺児における介助のしやすさに関連する因子の特定:システマティックレビュー

【はじめに、目的】脳性麻痺 (Cerebral palsy: CP)児の介助のしやすさは介助者の身体的・心理的健康に影響を与えるため重要な問題である。介助のしやすさは子どもが日常生活活動を安全に送れるように手助けすることの難しさを表しており、多くの因子が相互に関連している。先行研究では介助のしやすさは介護負担に影響を及ぼす下位概念であると示されている。したがって、介助のしやすさは介護負担よりもCP児と家族の生活に密接に関連しており、理学療法による直接的な介入の対象となる。しかし、介助のしやすさと介護負担の概念はしばしば混同されて考えられてきた。そのため介助のしやすさにどのような因子が関連してい...

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Published inThe Japanese Journal of Pediatric Physical Therapy Vol. 2; no. Supplement_1; p. 122
Main Authors 西部, 寿人, 井上, 和広, 大西, 浩文, 和泉, 裕斗, 樋室, 伸顕, 井上, 孝仁, 藤坂, 広幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本小児理学療法学会 31.03.2024
Japanese Society of Pediatric Physical Therapy
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ISSN2758-6456
DOI10.60187/jjppt.2.Supplement_1_122

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Summary:【はじめに、目的】脳性麻痺 (Cerebral palsy: CP)児の介助のしやすさは介助者の身体的・心理的健康に影響を与えるため重要な問題である。介助のしやすさは子どもが日常生活活動を安全に送れるように手助けすることの難しさを表しており、多くの因子が相互に関連している。先行研究では介助のしやすさは介護負担に影響を及ぼす下位概念であると示されている。したがって、介助のしやすさは介護負担よりもCP児と家族の生活に密接に関連しており、理学療法による直接的な介入の対象となる。しかし、介助のしやすさと介護負担の概念はしばしば混同されて考えられてきた。そのため介助のしやすさにどのような因子が関連しているのかは整理されていない。そこで本研究では、 CP児の介助のしやすさに関連する因子を明らかにするためのシステマティックレビューを行った。 【方法】検索データベースはPubMed, CINAHL, MEDLINE, Web of Science, Cochrane Libraryとした。レビューは Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses (PRISMA)のガイドラインに従って行われた。また、レビューのプロトコルはPROSPEROに登録した (CRD42022359355)。取り込み基準は、原著論文、査読付き雑誌に全文掲載された論文であること、CP児またはその親や主な介助者を対象としていること、介助しやすさを測定していること、観察研究であることとした。除外基準は、ケースレポートやシステマティックレビュー、または介助のしやすさが測定されていないものとした。各論文における介助のしやすさの関連因子を抽出し、内容の類似した因子ごとにカテゴリー化を実施した (子どもの因子、介助者・家族の因子、外的・社会経済的因子)。 【結果】33,096論文が検索され、重複した論文、原著論文で ないものを削除した。一次スクリーニングでタイトルと抄録からスクリーニングし85の論文が残り、二次スクリーニングで全文をレビューした結果31の論文が採用され、33種類の因子が特定された。子どもの因子として、粗大運動機能、上肢機能、 コミュニケーション機能、体幹機能、呼吸筋力、両手動作機能、年齢、体重、知的障害、体脂肪、機能的自立度、微細運動、健 康関連QOL、疼痛、バランス能力、感覚処理、股関節脱臼、視覚障害、麻痺の分布、子どもの数が特定された。介助者・家族の因 子として、年齢、遊びや余暇活動に参加するための介助者の援助、日常生活におけるタスクの量、BMI、痛み、抑うつ、 健康関連 QOL、身体的健康、心理的健康、不安、時間的プレッシャー、介 助に関連する身体的動作、学歴が特定された。外的 ・社会経済的因子は特定されなかった。 【考察】本研究は全ての言語で書かれた研究論文を対象としていないという限界はあるが、介助のしやすさに関連する因子が明らかになった。CP児の介護負担に関連する因子を検討した先行研究と比較すると、介助のしやすさには子どもの身体機能に関連する因子がより多く関連していることが明らかになった。また、介助のしやすさと外的・社会経済的因子との関連を検討した報告は少なく、今後明らかにしていく必要がある。 【倫理的配慮】該当せず。
ISSN:2758-6456
DOI:10.60187/jjppt.2.Supplement_1_122