糞石を有する小児急性虫垂炎の盲端側における偏性嫌気性菌の意義 糞石の有無と切除虫垂内2点からの塗擦液の細菌培養結果の検討から

【目的】急性虫垂炎において,虫垂内の糞石より盲端側は閉鎖腔を形成しているとされる.しかし,糞石の有無と虫垂内腔の細菌叢の関連は十分に解明されていない.そのため,小児急性虫垂炎症例における,切除虫垂内2点から採取した塗擦液の細菌培養結果と糞石の有無の関連の後方視的検討から,糞石を有する症例における抗菌薬選択を検討した.【方法】2017年10月1日から2019年9月30日までの2年間,当科で急性虫垂炎に対し急性期に虫垂切除術を施行した15歳以下の全症例を対象とした.切除虫垂の断端(根部)に滅菌済みスワブを挿入した後,小切開した虫垂先端(端部)からも別のスワブを挿入し内腔を塗擦し,それぞれ細菌培養し...

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Published in日本小児外科学会雑誌 Vol. 56; no. 7; pp. 1061 - 1067
Main Authors 山口, 岳史, 荻野, 恵, 渡邊, 峻, 松寺, 翔太郎, 森田, 信司, 谷, 有希子, 山口, 悟, 小嶋, 一幸, 土岡, 丘, 中島, 政信
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本小児外科学会 20.12.2020
日本小児外科学会
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ISSN0288-609X
2187-4247
DOI10.11164/jjsps.56.7_1061

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Summary:【目的】急性虫垂炎において,虫垂内の糞石より盲端側は閉鎖腔を形成しているとされる.しかし,糞石の有無と虫垂内腔の細菌叢の関連は十分に解明されていない.そのため,小児急性虫垂炎症例における,切除虫垂内2点から採取した塗擦液の細菌培養結果と糞石の有無の関連の後方視的検討から,糞石を有する症例における抗菌薬選択を検討した.【方法】2017年10月1日から2019年9月30日までの2年間,当科で急性虫垂炎に対し急性期に虫垂切除術を施行した15歳以下の全症例を対象とした.切除虫垂の断端(根部)に滅菌済みスワブを挿入した後,小切開した虫垂先端(端部)からも別のスワブを挿入し内腔を塗擦し,それぞれ細菌培養した.画像上明瞭な糞石を有する群を有石群,有しない群を無石群とし,患者背景,塗擦液の細菌培養でコロニーを形成した菌種について後方視的に検討した.【結果】対象症例は有石群15例,無石群12例であり,平均在院日数が有石群で長期であったほか,患者背景に有意差はなかった.組織学的に評価した病期にも有意差はなかった.塗擦液の細菌培養の検出数上位9菌種の分布を比較検討すると,有石群の根部と有石群の端部,有石群の端部と無石群の端部の比較において,有石群の端部で有意に多く偏性嫌気性菌であるBacteroides属が検出されていた.検出された菌種の総計では好気性菌よりも嫌気性菌の方が多かったが,いずれも検出部位には差を認めなかった.【結論】有石性虫垂炎ではBacteroides属が病態に関与している可能性があり,特に糞石を有する穿孔性虫垂炎ではその感受性を考慮して抗菌薬を選択する必要があると考えられた.
ISSN:0288-609X
2187-4247
DOI:10.11164/jjsps.56.7_1061