腹壁に達する流注膿瘍に対して外科治療を行った結核性乳腺膿瘍の1例

症例は48歳,女性.慢性咳嗽の既往があるが,結核ならびに非定型抗酸菌症と診断されたことはない.1年前より続く乳房の発赤と皮膚に露出した腫瘤性病変を主訴に,当院を受診した.濃厚な乳癌家族歴があり,実姉がBCRA2変異乳癌であった.肉眼所見および家族歴から進行乳癌を疑い,全身検索のために施行した胸腹部造影CTにおいて,胸壁を貫通し腹壁に至る膿瘍性病変の他,両肺野に散在する策状影を認めた.画像所見より結核症の可能性が否定できず,喀痰培養および乳房腫瘤浸出液の培養検査を行ったところ,喀痰から結核菌が検出され,結核性乳腺膿瘍と診断した.本邦の結核は減少傾向にあり,結核性乳腺膿瘍は稀であるが,乳腺内の結節...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 82; no. 9; pp. 1631 - 1635
Main Authors 桑野, 秀規, 田中, 優子, 平野, 稔, 神定, のぞみ, 吉田, 大介, 鈴木, 良夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2021
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.82.1631

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Summary:症例は48歳,女性.慢性咳嗽の既往があるが,結核ならびに非定型抗酸菌症と診断されたことはない.1年前より続く乳房の発赤と皮膚に露出した腫瘤性病変を主訴に,当院を受診した.濃厚な乳癌家族歴があり,実姉がBCRA2変異乳癌であった.肉眼所見および家族歴から進行乳癌を疑い,全身検索のために施行した胸腹部造影CTにおいて,胸壁を貫通し腹壁に至る膿瘍性病変の他,両肺野に散在する策状影を認めた.画像所見より結核症の可能性が否定できず,喀痰培養および乳房腫瘤浸出液の培養検査を行ったところ,喀痰から結核菌が検出され,結核性乳腺膿瘍と診断した.本邦の結核は減少傾向にあり,結核性乳腺膿瘍は稀であるが,乳腺内の結節性あるいは膿瘍性病変に対し,肺外結核の可能性も念頭に置きつつ鑑別診断を行う必要がある.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.82.1631