妊娠経過に伴う下肢深部静脈血流の生理的変化
目的: 下肢深部静脈血流の妊娠経過に伴う変化を検出し, その臨床的意義を探る.対象: 順天堂医院に通院中の妊婦と当院で出産した産婦116人および非妊婦10人を対象とした.方法: 妊娠初期 (6-10週), 中期 (20-24週), 後期 (30-34週), 分娩前 (36週以降), 分娩後 (産褥3日目) に検査期間を分け, それぞれ30回ずつ, 左右の浅大腿静脈 (FV) と膝窩静脈 (PV) の血管径と血流速度を, 超音波診断装置を用いて測定し妊娠中の変化および左右差を比較検討した.結果: FV, PVともに血管径は妊娠初期には有意差を認めなかったが, 中期以降は妊娠とともに有意に拡張した...
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Published in | 順天堂医学 Vol. 53; no. 3; pp. 477 - 484 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
順天堂医学会
2007
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0022-6769 2188-2134 |
DOI | 10.14789/pjmj.53.477 |
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Summary: | 目的: 下肢深部静脈血流の妊娠経過に伴う変化を検出し, その臨床的意義を探る.対象: 順天堂医院に通院中の妊婦と当院で出産した産婦116人および非妊婦10人を対象とした.方法: 妊娠初期 (6-10週), 中期 (20-24週), 後期 (30-34週), 分娩前 (36週以降), 分娩後 (産褥3日目) に検査期間を分け, それぞれ30回ずつ, 左右の浅大腿静脈 (FV) と膝窩静脈 (PV) の血管径と血流速度を, 超音波診断装置を用いて測定し妊娠中の変化および左右差を比較検討した.結果: FV, PVともに血管径は妊娠初期には有意差を認めなかったが, 中期以降は妊娠とともに有意に拡張した (p<0.001). RFV, LFV, LPVでは妊娠に伴って初期-中期, 中期-後期に有意な拡張を認め (RFV: 初期-中期p<0.001, 中期-後期p<0.01, LFVおよびLPV: 初期-中期, 中期-後期p<0.001), RPVでは初期-中期で有意な拡張を認めた (p<0.001). 左右の比較では後期に左側で有意に拡張が認められた (FVp<0.01, PVp<0.001). 血流速度は妊娠初期には有意な変化はなかったが, その後, 初期-中期にかけ血流速度が有意に低下した (RFV:p<0.001, LFV, RPV, LPV:p<0.01). しかし, 左右差は認めなかった. なお, 産後3日目には血管径, 血流速度とも速やかに妊娠前のレベルにまで回復した.結論: 今回, 以前より指摘されていた妊娠中のDVTが左側に危険が高いことが確認された. 一方, 正常妊娠では血管径に左右差が生じても流速には左右差が生じなかったことより, 血栓形成には流速が大きく関与していることが推測された. 以上より, 超音波検査は静脈血栓の診断のみならず, 血管径の変化および静脈血流の変化を詳細に検討することにより血栓形成ハイリスク患者の抽出にも大変有用な検査となりうることが示唆された. |
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ISSN: | 0022-6769 2188-2134 |
DOI: | 10.14789/pjmj.53.477 |