炎症性腹部大動脈瘤に対してステントグラフト治療を施行した1例の検討

炎症性大動脈瘤に対するステントグラフト治療は癒着による周辺臓器損傷の回避が期待されるが,その長期成績や尿管通過障害の改善などについては不明のままである.症例は71歳男性,瘤径44 mmの腹部大動脈瘤と瘤径42 mmの両側総腸骨動脈瘤に加えて,尿管巻き込みによる水腎症も認めた.また術前検査にてIgG4が147 mg/dLと高値であった.炎症性腹部大動脈瘤疑いにてステントグラフト治療を行った.術後速やかな瘤径の縮小と炎症反応の陰転化を認めたが,IgG4は依然高値であり,瘤周囲の組織肥厚の縮小はなく,水腎症も改善しなかった.ステロイド治療を追加したところ瘤周囲の肥厚は速やかに退縮を示した.術後瘤径の...

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Published in日本血管外科学会雑誌 Vol. 29; no. 5; pp. 351 - 354
Main Authors 藤井, 太郎, 澤崎, 優, 泊, 史朗, 植村, 友稔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本血管外科学会 23.11.2020
日本血管外科学会
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Summary:炎症性大動脈瘤に対するステントグラフト治療は癒着による周辺臓器損傷の回避が期待されるが,その長期成績や尿管通過障害の改善などについては不明のままである.症例は71歳男性,瘤径44 mmの腹部大動脈瘤と瘤径42 mmの両側総腸骨動脈瘤に加えて,尿管巻き込みによる水腎症も認めた.また術前検査にてIgG4が147 mg/dLと高値であった.炎症性腹部大動脈瘤疑いにてステントグラフト治療を行った.術後速やかな瘤径の縮小と炎症反応の陰転化を認めたが,IgG4は依然高値であり,瘤周囲の組織肥厚の縮小はなく,水腎症も改善しなかった.ステロイド治療を追加したところ瘤周囲の肥厚は速やかに退縮を示した.術後瘤径の縮小に関しては速やかであったが,瘤周囲の肥厚はステントグラフト単独では退縮せず,ステロイド治療の併用によって退縮が得られたことから,外科的治療に加えてステロイド併用の重要性が確認された.
ISSN:0918-6778
1881-767X
DOI:10.11401/jsvs.20-00030