脳血管障害と睡眠障害
脳血管障害は疾患に特徴的な多彩な要因が睡眠障害を引き起こします. 脳幹や視床下部, 大脳基底核の相互作用で睡眠覚醒リズムを制御しているため, 脳血管障害の局所症状として睡眠障害が現れることもあります. 代表的なものとして, 傍正中視床梗塞では過眠症状を呈します. 脳血管障害の症状として麻痺や感覚障害に伴う痛み, 日中の活動制限による昼夜逆転, せん妄, 夜間頻尿, 脳卒中後うつ状態など様々な要因で不眠を訴えることがあります. また, 薬剤の副作用や睡眠関連呼吸障害で日中の過眠症状を呈することもあります. このように, 脳血管障害患者では睡眠覚醒リズムに影響しうる多彩な要因を考慮し, 個々の症例...
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Published in | 神経治療学 Vol. 35; no. 4; p. 555 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本神経治療学会
2018
Japanese Society of Neurological Therapeutics |
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ISSN | 0916-8443 2189-7824 |
DOI | 10.15082/jsnt.35.4_555 |
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Summary: | 脳血管障害は疾患に特徴的な多彩な要因が睡眠障害を引き起こします. 脳幹や視床下部, 大脳基底核の相互作用で睡眠覚醒リズムを制御しているため, 脳血管障害の局所症状として睡眠障害が現れることもあります. 代表的なものとして, 傍正中視床梗塞では過眠症状を呈します. 脳血管障害の症状として麻痺や感覚障害に伴う痛み, 日中の活動制限による昼夜逆転, せん妄, 夜間頻尿, 脳卒中後うつ状態など様々な要因で不眠を訴えることがあります. また, 薬剤の副作用や睡眠関連呼吸障害で日中の過眠症状を呈することもあります. このように, 脳血管障害患者では睡眠覚醒リズムに影響しうる多彩な要因を考慮し, 個々の症例に応じた対策を検討する必要があります. 脳血管障害の睡眠障害の中で, 睡眠関連呼吸障害は脳卒中治療ガイドラインでも, 脳卒中の危険因子として注目されています. 睡眠関連呼吸障害は睡眠中の無呼吸や低呼吸により特徴づけられ, 睡眠1時間当たりの無呼吸と低呼吸の回数が5以上で定義されます. 脳卒中患者では睡眠関連呼吸障害の罹患率が半数を超え, 特に中途覚醒や日中の眠気などの睡眠関連症状を伴う場合に睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome:SAS)と呼ばれ, 閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea : OSA)と中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea : CSA)とに大別されます. SASでも特にOSAは脳卒中の危険因子となります. OSAでは夜間の間欠的低酸素血症により交感神経活動亢進し, 血管内皮障害をきたし, 高血圧や血管イベントと密接に関連します. 脳卒中発症後のSASの検討でも死亡やせん妄, 運動機能障害, うつなどの予後不良因子になります. 治療としてもっとも確立されているのが持続的陽圧呼吸療法(continuous positive airway pressure : CPAP)で, 長期的な降圧療法, 凝固能亢進の改善, 炎症マーカーの改善, インスリン抵抗性の改善とともに心血管疾患による死亡率を低下させます. 特に重症のSASではCPAPの導入が必要です. しかし, CPAP治療のアドヒアランスの低下が問題となります. 失語症, 認知機能障害, 重度の運動機能障害が原因となるため, 治療アドヒアランス向上のための対策が重要となります. |
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ISSN: | 0916-8443 2189-7824 |
DOI: | 10.15082/jsnt.35.4_555 |