外科的矯正治療を行った上顎前歯唇側傾斜を伴う上顎前突症の1例
「緒言」外科的矯正治療を受ける患者は, 近年, 増加傾向にある. これは顎矯正手術の治療効果や安全性について一般的に広く認識されてきたからと考えられている1). 一方, これに伴い患者の治療結果に対する要求は非常に高くなり, 審美的要素に関しては, 十分な改善が得られるように治療方針を検討する必要があると考えられる. 本邦では顎変形症患者のほとんどは下顎前突症であり, 高橋ら2)は外科的矯正治療を施行した患者について, 骨格性下顎前突症が93%であるのに対して骨格性上顎前突症は2%と報告している. このように骨格性上顎前突症は外科的矯正治療の中で, その頻度は少ないとされている3). そのため...
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Published in | 日本顎変形症学会雑誌 Vol. 10; no. 1; pp. 74 - 80 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本顎変形症学会
2000
日本顎変形症学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0916-7048 1884-5045 |
DOI | 10.5927/jjjd1991.10.74 |
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Summary: | 「緒言」外科的矯正治療を受ける患者は, 近年, 増加傾向にある. これは顎矯正手術の治療効果や安全性について一般的に広く認識されてきたからと考えられている1). 一方, これに伴い患者の治療結果に対する要求は非常に高くなり, 審美的要素に関しては, 十分な改善が得られるように治療方針を検討する必要があると考えられる. 本邦では顎変形症患者のほとんどは下顎前突症であり, 高橋ら2)は外科的矯正治療を施行した患者について, 骨格性下顎前突症が93%であるのに対して骨格性上顎前突症は2%と報告している. このように骨格性上顎前突症は外科的矯正治療の中で, その頻度は少ないとされている3). そのため, 十分な治療結果を得るために治療開始時には緻密な治療計画が必要と考えられる. 骨格性上顎前突症に関して, 咬合形態はさることながら, 審美的な形態の十分な改善を得るためには, 上唇部の後方移動が必要と考えられる. 今回, われわれは口裂の自然閉鎖が不可能な上顎前歯の唇側傾斜と上顎前突を合併した症例に対し, 上顎前方歯槽部骨切り術と下顎枝矢状分割術を併用し, 良好な咬合関係と顔貌形態が得られた症例を経験したので, 術前矯正治療を含め, その治療経過について報告する. |
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ISSN: | 0916-7048 1884-5045 |
DOI: | 10.5927/jjjd1991.10.74 |