急性精巣上体炎の臨床像の後方視的検討 精巣萎縮に注目して

【目的】急性精巣上体炎は急性陰囊症と総称される疾患の一つで,比較的頻度の高い疾患である.精巣予後が良好な疾患であるが,近年発症後に精巣萎縮を来した報告があり,当施設でも同様の症例を経験した.小児急性精巣上体炎の治療方針について改めて検討すべく,当施設で経験した症例を後方視的に検討したので報告する.【方法】2008年4月~2022年4月の期間中に急性精巣上体炎と診断され治療を行った77例を対象とし(再発例を除く),年齢,患側,発症から来院までの時間,臨床症状,身体所見,検査所見,治療内容,転帰について診療録を元に後方視的に検討した.【結果】発症時年齢は1か月~14歳(中央値8歳),患側は右側36...

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Published in日本小児外科学会雑誌 Vol. 60; no. 2; pp. 147 - 152
Main Authors 小幡, 聡, 宮田, 潤子, 増田, 吉朗, 田尻, 達郎, 近藤, 琢也, 川久保, 尚徳, 福田, 篤久, 栁, 佑典, 松浦, 俊治, 永田, 公二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本小児外科学会 20.04.2024
日本小児外科学会
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ISSN0288-609X
2187-4247
DOI10.11164/jjsps.60.2_147

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Summary:【目的】急性精巣上体炎は急性陰囊症と総称される疾患の一つで,比較的頻度の高い疾患である.精巣予後が良好な疾患であるが,近年発症後に精巣萎縮を来した報告があり,当施設でも同様の症例を経験した.小児急性精巣上体炎の治療方針について改めて検討すべく,当施設で経験した症例を後方視的に検討したので報告する.【方法】2008年4月~2022年4月の期間中に急性精巣上体炎と診断され治療を行った77例を対象とし(再発例を除く),年齢,患側,発症から来院までの時間,臨床症状,身体所見,検査所見,治療内容,転帰について診療録を元に後方視的に検討した.【結果】発症時年齢は1か月~14歳(中央値8歳),患側は右側36例,左側40例,両側1例,発症から受診までの時間は中央値8時間(IQR,5~14.5時間)であった.症状は,陰囊痛75例(97%),陰囊の腫脹44例(57%),発赤28例(36%),腹痛8例(10%),発熱5例(7%)であった.治療後の経過観察は,再診し経過観察をした症例が65例(84%)で,有事再診のみが12例(16%),観察期間の中央値は40日(IQR,7~249日)であった.精巣予後は,治療後1か月以上経過が追えた症例が33例(43%),そのうち精巣萎縮を来した症例を1例認めた.萎縮を来した症例は,経過より,精巣上体炎の波及から精巣炎を来したものと考えられた.【結論】急性精巣上体炎は精巣予後良好な疾患だが,稀に精巣炎への波及を来し精巣萎縮の原因となる可能性があり,炎症が強い症例は長期的な観察も考慮するべきである.そのために,治療方針や経過観察期間の一定の基準が求められる.
ISSN:0288-609X
2187-4247
DOI:10.11164/jjsps.60.2_147