強心薬離脱に難渋する機能性僧帽弁閉鎖不全症の併存する心不全に対して経皮的僧帽弁クリップ術を行った1例

症例は86歳男性.81歳頃から虚血性心筋症による心不全で入院を繰り返すようになった.4度目の心不全入院で強心薬の離脱が困難であり当院に紹介となった.強心薬持続静注下で左室拡張末期径62 mm,左室駆出率34%かつ有効逆流弁口面積0.50 cm2の機能性僧帽弁閉鎖不全症(FMR)を認めており,転院後強心薬の増量により心不全は代償できたものの強心薬の減量や心保護薬の導入は容易ではなかった.一方で僧帽弁形態は経食道心エコー検査上,解剖学的にMitraClipを用いた経皮的僧帽弁クリップ術に適しており,高齢であり長期間の入院によるfrailtyの進行に対する危惧から心不全コントロールの改善を優先し静注...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in心臓 Vol. 53; no. 11; pp. 1232 - 1238
Main Authors 福田, 信之, 絹川, 弘一郎, 今村, 輝彦, 田中, 修平, 上野, 博志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.11.2021
日本心臓財団・日本循環器学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.53.1232

Cover

More Information
Summary:症例は86歳男性.81歳頃から虚血性心筋症による心不全で入院を繰り返すようになった.4度目の心不全入院で強心薬の離脱が困難であり当院に紹介となった.強心薬持続静注下で左室拡張末期径62 mm,左室駆出率34%かつ有効逆流弁口面積0.50 cm2の機能性僧帽弁閉鎖不全症(FMR)を認めており,転院後強心薬の増量により心不全は代償できたものの強心薬の減量や心保護薬の導入は容易ではなかった.一方で僧帽弁形態は経食道心エコー検査上,解剖学的にMitraClipを用いた経皮的僧帽弁クリップ術に適しており,高齢であり長期間の入院によるfrailtyの進行に対する危惧から心不全コントロールの改善を優先し静注強心薬使用下であったがMitraClipを先行させる方針とした.治療により心拍出量は著明に増加し,強心薬の離脱,β遮断薬の導入後自宅退院できた. FMRに対するMitraClipは本邦でも広まってきており,2020年4月にはさらに進行した心不全症例にも適応が拡大された.病状のより進んだ症例に対するMitraClipの有用性は乏しい可能性も示唆されているが適切な治療戦略により良好な転帰をたどった症例を経験したため治療適応に関する考察を含め報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.53.1232