ダイオキシン感受性因子としての鳥類AHR1 遺伝子型と生態要因の関係

アリルハイドロカーボン受容体(AHR)は リガンドによって活性化される転写因子である。 鳥類AHR1 の遺伝子型は,ニワトリAHR1 で324・380 番目に相当するリガンド結合ドメイン内の2 つのアミノ酸残基によって,Ile_Ser(I_S)型・Ile_Ala(I_A)型・Val_Ala(V_A)型に分類される。I_S 型は2,3,7,8-TetraCDD に対して低濃度でも反応するが,V_A 型は高濃度にならないと反応しない。 しかしながら,鳥類で感受性が異なるAHR1 遺伝子型を持つことが進化学的にどのような意味があるのかについては不明である。本研究では,鳥類の生態学的要因 とAHR1...

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Published in日本野生動物医学会誌 Vol. 22; no. 4; pp. 57 - 61
Main Author 岩田, 久人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本野生動物医学会 22.12.2017
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ISSN1342-6133
2185-744X
DOI10.5686/jjzwm.22.57

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Summary:アリルハイドロカーボン受容体(AHR)は リガンドによって活性化される転写因子である。 鳥類AHR1 の遺伝子型は,ニワトリAHR1 で324・380 番目に相当するリガンド結合ドメイン内の2 つのアミノ酸残基によって,Ile_Ser(I_S)型・Ile_Ala(I_A)型・Val_Ala(V_A)型に分類される。I_S 型は2,3,7,8-TetraCDD に対して低濃度でも反応するが,V_A 型は高濃度にならないと反応しない。 しかしながら,鳥類で感受性が異なるAHR1 遺伝子型を持つことが進化学的にどのような意味があるのかについては不明である。本研究では,鳥類の生態学的要因 とAHR1 遺伝子型との関連性を統計学的手法で解析し,AHR1 遺伝子型に影響する要因について考察した。 結果的に, 鳥類AHR1 遺伝子の(ニワトリAHR1 で324・380 番目に相当する)2 つのアミノ酸残基は 自然由来ダイオキシン類の代謝・排出のために変異したと推察される。 例えば,水鳥や猛禽類の自然由来ダイオキシン類への曝露がAHR1 遺伝子の選択圧となり, 人間活動由来ダイオキシン類に対する低感受性をもたらしたと考えた。
ISSN:1342-6133
2185-744X
DOI:10.5686/jjzwm.22.57