CYP2C19機能喪失遺伝子多型が確認された早期ステント血栓症の1例

症例は38歳,男性.急性前壁中隔心筋梗塞の診断で,左前下行枝(left anterior descending artery;LAD) #6の完全閉塞に対し,緊急経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)を施行した.アスピリン81mgとクロピドグレル初回投与量300mgを前投与し,ステントを留置した.良好に拡張され,以降2剤の投与を継続した.第13病日の冠動脈造影で,LADステント留置部に血栓閉塞を認め,再PCIを行いTIMI3の血流が得られた.クロピドグレル抵抗性を疑いシロスタゾールを追加した.6カ月後の冠動脈造影では,ステ...

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Published in心臓 Vol. 44; no. 9; pp. 1143 - 1148
Main Authors 佐伯, 仁, 渋井, 敬志, 飯田, 啓太, 石原, 卓, 磯部, 光章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.09.2012
日本心臓財団・日本循環器学会
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Summary:症例は38歳,男性.急性前壁中隔心筋梗塞の診断で,左前下行枝(left anterior descending artery;LAD) #6の完全閉塞に対し,緊急経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention;PCI)を施行した.アスピリン81mgとクロピドグレル初回投与量300mgを前投与し,ステントを留置した.良好に拡張され,以降2剤の投与を継続した.第13病日の冠動脈造影で,LADステント留置部に血栓閉塞を認め,再PCIを行いTIMI3の血流が得られた.クロピドグレル抵抗性を疑いシロスタゾールを追加した.6カ月後の冠動脈造影では,ステント再狭窄および晩期ステント血栓症は認めなかった.CYP2C19*2の患者は,ステント血栓症のリスクが高いことが指摘されている.CYP2C19遺伝子多型解析では,CYP2C19*2のホモ接合体であり,クロピドグレル抵抗性と考えられた.CYP2C19*2 ホモ接合体の患者に生じた早期ステント血栓症の症例に対し,抗血小板薬3剤の投与により晩期ステント血栓症の発生を回避し得た.本邦ではCYP2C19*2を持つ患者が多く,クロピドグレル抵抗性を考慮した抗血小板薬の選択が必要であると考えられた.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.44.1143