冠攣縮性狭心症による再発性心室ペーシング不全が疑われ,冠灌流域に応じた心室リード再留置が奏効した1例

症例は70歳代男性.失神を伴う発作性房室ブロックに対して,タインドリードによるデュアルチャンバーペースメーカ植込み術を施行した.植込み時の心室ペーシング閾値は0.5 V/0.4 msであり,出力を2.5 V/0.4 msに固定して退院した.術後9日目に早朝の散歩中に失神して救急搬送された.心室ペーシング閾値は上昇し,心室ペーシング不全を起こしていたが,10分後の再測定で閾値は改善した.Micro dislodgementが原因と判断して,心室リードの再留置術を行い,より心尖部方向に固定を強化した.しかし,病棟へ帰室直後に再び一過性の心室ペーシング閾値上昇を伴うペーシング不全による失神をきたした...

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Published in心臓 Vol. 55; no. 6; pp. 615 - 621
Main Authors 坂元, 美季, 伊藤, 達郎, 永松, 裕一, 角谷, 誠, 白木, 里織, 中西, 智之, 澤田, 隆弘, 岡嶋, 克則, 大西, 祥男, 下浦, 広之, 寺尾, 侑也, 白井, 丈晶
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.06.2023
日本心臓財団・日本循環器学会
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.55.615

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Summary:症例は70歳代男性.失神を伴う発作性房室ブロックに対して,タインドリードによるデュアルチャンバーペースメーカ植込み術を施行した.植込み時の心室ペーシング閾値は0.5 V/0.4 msであり,出力を2.5 V/0.4 msに固定して退院した.術後9日目に早朝の散歩中に失神して救急搬送された.心室ペーシング閾値は上昇し,心室ペーシング不全を起こしていたが,10分後の再測定で閾値は改善した.Micro dislodgementが原因と判断して,心室リードの再留置術を行い,より心尖部方向に固定を強化した.しかし,病棟へ帰室直後に再び一過性の心室ペーシング閾値上昇を伴うペーシング不全による失神をきたした.冠動脈造影検査では左前下行枝(LAD)の末梢が心尖部を回り込んで走行していたが,アセチルコリン負荷試験にてLADの高度攣縮を認め,冠攣縮性狭心症が一過性の心室ペーシング閾値上昇の原因と考えられた.薬物治療導入後も一過性心室ペーシング不全は改善なく,心室リードをスクリューリードに交換し,LAD灌流域から右冠動脈灌流域へ移動した.その後は閾値上昇なく経過している.冠攣縮性狭心症による閾値上昇が再発性心室ペーシング不全の原因と考えられた症例を経験したため報告する.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.55.615