行動調整法の選択が困難であった気管狭窄を伴った先天異常症候群の1例
先天異常症候群は複数臓器に異常を認める疾患の総称で,出生時の先天異常に伴い呼吸障害が合併し,気管切開による呼吸管理を行うことがある.今回,知的能力障害および幼少期の気管切開の既往により気管狭窄を認め,歯科治療にあたって静脈内鎮静法や全身麻酔法の導入が不可能となり,行動調整法の選択が困難であった先天異常症候群の症例を経験したので報告する.患者は20歳男性で,主訴は歯科治療の希望であった.障害名は先天異常症候群,重度知的能力障害で,出生時の低酸素脳症により気管切開手術を受けた.4歳時に気管カニューレを抜去した.現病歴は2009年1月にかかりつけ歯科医にて多数歯う蝕の治療で徒手抑制下にて対応するも,...
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Published in | 日本障害者歯科学会雑誌 Vol. 41; no. 4; pp. 353 - 358 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本障害者歯科学会
31.10.2020
日本障害者歯科学会 |
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ISSN | 0913-1663 2188-9708 |
DOI | 10.14958/jjsdh.41.353 |
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Summary: | 先天異常症候群は複数臓器に異常を認める疾患の総称で,出生時の先天異常に伴い呼吸障害が合併し,気管切開による呼吸管理を行うことがある.今回,知的能力障害および幼少期の気管切開の既往により気管狭窄を認め,歯科治療にあたって静脈内鎮静法や全身麻酔法の導入が不可能となり,行動調整法の選択が困難であった先天異常症候群の症例を経験したので報告する.患者は20歳男性で,主訴は歯科治療の希望であった.障害名は先天異常症候群,重度知的能力障害で,出生時の低酸素脳症により気管切開手術を受けた.4歳時に気管カニューレを抜去した.現病歴は2009年1月にかかりつけ歯科医にて多数歯う蝕の治療で徒手抑制下にて対応するも,体動が大きいために某総合病院歯科へ依頼した.そこでも治療困難のため某大学病院へ紹介された後に,某県立総合病院歯科口腔外科へ抜歯依頼にて転院した.2011年9月に全身麻酔法下での抜歯を予定していたが,気管狭窄のため挿管時に声門下から気管チューブが挿管できず抜歯中止となった.その後は歯科疾患の重症化のため2013年12月に某大学附属病院障害者歯科に紹介来院した.外来通院にて身体抑制法下で順次歯科治療を実施した.歯科治療の内容はレジン充塡によるう蝕治療が8歯,抜髄後の補綴治療が4歯,歯の抜去が13歯であった.身体抑制法下でも可及的に行動療法を取り入れた結果,最終的には適応性が良好となり通法下での対応が可能となった. |
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ISSN: | 0913-1663 2188-9708 |
DOI: | 10.14958/jjsdh.41.353 |