HTLV-1キャリアに発症した舌癌の1例

ヒトT細胞白血病ウィルスI型(human T-cell leukemia virus type I;HTLV-1)は成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia;ATL)の原因である。口腔内に生じたATLの症例がこれまでにいくつか報告されている。さらにATL患者では固形癌の合併率が高いことが報告されていることから,HTLV-1キャリア患者に悪性腫瘍を疑う口腔粘膜病変が生じた場合,ATL発症を否定する必要がある。 44歳のHTLV-1キャリアの女性が2,3週間前より舌の腫瘤を自覚した。初診時,左側舌縁部に30×20mm大の硬結のある腫瘤を認めた。検査所見では抗HTLV-...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 21; no. 3; pp. 211 - 216
Main Authors 安部, 貴大, 依田, 哲也, 小林, 明男, 嶋村, 由美子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2009
日本口腔腫瘍学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.21.211

Cover

More Information
Summary:ヒトT細胞白血病ウィルスI型(human T-cell leukemia virus type I;HTLV-1)は成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia;ATL)の原因である。口腔内に生じたATLの症例がこれまでにいくつか報告されている。さらにATL患者では固形癌の合併率が高いことが報告されていることから,HTLV-1キャリア患者に悪性腫瘍を疑う口腔粘膜病変が生じた場合,ATL発症を否定する必要がある。 44歳のHTLV-1キャリアの女性が2,3週間前より舌の腫瘤を自覚した。初診時,左側舌縁部に30×20mm大の硬結のある腫瘤を認めた。検査所見では抗HTLV-1抗体陽性で,血液塗抹標本上で1%の異常リンパ球を認めた。臨床診断は舌悪性腫瘍とした。舌腫瘤の生検の結果,扁平上皮癌であった。舌腫瘤および末梢血のHTLV-1DNAサザンブロット法の結果,HTLV-1プロウィルスDNAのポリクローナルな組み込みが認められ,ATLの発症は否定された。 舌癌(T2N2bM0)の術前診断とした。それにより舌亜全摘,左側頸部郭清,再建を施行した。術後放射線照射中に右頸部リンパ節転移が出現した。したがって,右側頸部郭清および追加照射をおこなった。しかし,骨および肺への遠隔転移が確認され初診から12か月後に死亡した。 以上の所見はHTLV-1感染が細胞性免疫の低下をひきおこし,癌の急速な進行に関与していると考えられた。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.21.211