日本人に対する英語語音聴力検査の試み

本研究では,日本人がどのように英語の語音聴取を行っているかという点に着目し,正常聴力の日本人に対し英語の語音聴力検査を行った.検査の対象は,19歳から36歳までの正常聴力者10名20耳で,大学在学中の学生や大学卒業程度の英語学習経験を有し,英会話等で英語学習を継続する者や海外滞在経験のある者を選出した.検査語表には,日本語として67-S語表を,英語としてCentral Institutefor the Deaf (C.I.D.) Auditory Test W-1 list及びW-2 listを用いた.英語の語音聴力検査の結果について,平均純音聴力レベルや日本語の語音聴力検査の結果と比較した....

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 101; no. 7; pp. 879 - 883
Main Authors 清水, 隆, 山岸, 豪敏, 吉田, 雅文, 牧嶋, 和見
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 1998
日本耳鼻咽喉科学会
Subjects
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.101.7_879

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Summary:本研究では,日本人がどのように英語の語音聴取を行っているかという点に着目し,正常聴力の日本人に対し英語の語音聴力検査を行った.検査の対象は,19歳から36歳までの正常聴力者10名20耳で,大学在学中の学生や大学卒業程度の英語学習経験を有し,英会話等で英語学習を継続する者や海外滞在経験のある者を選出した.検査語表には,日本語として67-S語表を,英語としてCentral Institutefor the Deaf (C.I.D.) Auditory Test W-1 list及びW-2 listを用いた.英語の語音聴力検査の結果について,平均純音聴力レベルや日本語の語音聴力検査の結果と比較した.平均純者聴力レベルと日本語の語音聴取域値はほぼ一致したが,英語の語音聴取域値は日本語のそれと比べ有意に高い値を示した.また,日本語では全例において100%の語音弁別能が得られたのに対し,英語の語音弁別能は平均89.5%であり,78%から100%と個人によるばらつきが大きく見られた. さらに英語の語者聴取特性についての解析を行うと,子者のうち/m/,/n/,/P/,/δ/の音素は90%以下の正答率であり,無声子音は有声子音に比べ受聴の明瞭度が低くなる傾向が見られた.このような異聴の傾向については個人差が大きく,個人の英語経験の違いだけでなく,日本語と英語の音素の違いや.音声構造の違いによる,聞き分けの難しさが語音弁別能に大きく影響したと考えられた.S/N比の低い騒音環境下では,日本人の英語の語音聴取における語音弁別能はより低下し,その異聴の傾向はさらに顕著になるものと考えられ,今後このような環境におけるさらなる検討が必要であると思われた.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.101.7_879