術後感染症と臓器不全
近年の消化器外科領域の技術的な進歩は目覚ましいものがあるが,一方で術後合併症の一つである術後腹腔内感染症の頻度は必ずしも減少していない.術後感染症が臓器不全にいたるメカニズムは臓器非特異的であり,Phase I;好中球細胞外トラップという自然免疫と血管内血小板凝集,Phase II;血管外血小板凝集と血管外血小板凝集由来因子の放出,Phase III;臓器障害,凝固線溶異常,免疫麻痺状態期へと進行し,最終的に臓器不全にいたる.そのため,術後感染症の発症を予防すること,術後感染症を発症した場合には臓器不全へと進行することを防ぐことが重要であるが,その中でも栄養の果たす役割は大きい.血糖管理,低栄...
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Published in | 外科と代謝・栄養 Vol. 55; no. 1; pp. 17 - 21 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本外科代謝栄養学会
2021
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Subjects | |
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ISSN | 0389-5564 2187-5154 |
DOI | 10.11638/jssmn.55.1_17 |
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Summary: | 近年の消化器外科領域の技術的な進歩は目覚ましいものがあるが,一方で術後合併症の一つである術後腹腔内感染症の頻度は必ずしも減少していない.術後感染症が臓器不全にいたるメカニズムは臓器非特異的であり,Phase I;好中球細胞外トラップという自然免疫と血管内血小板凝集,Phase II;血管外血小板凝集と血管外血小板凝集由来因子の放出,Phase III;臓器障害,凝固線溶異常,免疫麻痺状態期へと進行し,最終的に臓器不全にいたる.そのため,術後感染症の発症を予防すること,術後感染症を発症した場合には臓器不全へと進行することを防ぐことが重要であるが,その中でも栄養の果たす役割は大きい.血糖管理,低栄養状態の改善,経腸栄養,免疫栄養は感染制御に臨床的有効性が示されている栄養管理であり,周術期に適切な血糖管理を行い,大手術を行う前に低栄養状態を改善させ,腸管が使用できるならばなるべく複数種類の免疫栄養剤の経口または経腸投与を行うことは,術後感染症から臓器不全への進行を防ぐ一助となるかもしれない. |
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ISSN: | 0389-5564 2187-5154 |
DOI: | 10.11638/jssmn.55.1_17 |