腎疾患診療とAI

「抄録」日本の慢性腎臓病患者数は約1,400万人と試算されている. 進行すると透析や腎移植が必要になるだけではなく, 免疫力の低下や動脈硬化の進行を介して主要な死亡原因と関連している. 診断には腎生検の他, 超音波, MRI, CTなどの画像検査も用いられるが, 日常診療では血清クレアチニン, 蛋白尿, 血圧が主要な評価項目である. これらの既存の臨床データを特徴量として, 急性腎障害の発症や, 生命予後, 腎疾患進行リスクの推定にAI診断の導入が試みられている. 腎生検の定量的評価においてもAI的手法の導入が模索されており, 組織分類や病変の識別に高い精度を発揮している. MRIを代表とする...

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Published in総合健診 Vol. 51; no. 2; pp. 236 - 241
Main Authors 井上勉, 岡田浩一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本総合健診医学会 10.03.2024
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Summary:「抄録」日本の慢性腎臓病患者数は約1,400万人と試算されている. 進行すると透析や腎移植が必要になるだけではなく, 免疫力の低下や動脈硬化の進行を介して主要な死亡原因と関連している. 診断には腎生検の他, 超音波, MRI, CTなどの画像検査も用いられるが, 日常診療では血清クレアチニン, 蛋白尿, 血圧が主要な評価項目である. これらの既存の臨床データを特徴量として, 急性腎障害の発症や, 生命予後, 腎疾患進行リスクの推定にAI診断の導入が試みられている. 腎生検の定量的評価においてもAI的手法の導入が模索されており, 組織分類や病変の識別に高い精度を発揮している. MRIを代表とする画像診断の進歩は, これまで叶わなかった腎病態の可視化を可能にした. 撮像法の工夫によって腎臓の虚血・低酸素状態, 灌流量, 微細構造の変性や線維化に関連する情報を非侵襲的に取得可能である. AI技術は膨大な画像情報を包括的・定量的に処理する手段として重用されている. 慢性腎臓病は未だに有効な治療法がないため, 早期診断と適切な治療介入が重要である. AI技術の活用は, 腎疾患の正確な診断や治療効果の評価に貢献し, 臨床研究の進展にも大きな影響を与えると期待されている.
ISSN:1347-0086
DOI:10.7143/jhep.51.236