嚥下リハビリテーション施行患者の嚥下機能への影響を考慮した基礎疾患治療薬の選択に関する一考察

高齢者では,基礎疾患の治療に対し,多種の薬剤を継続して投与しているケースが多く,それらの薬剤が嚥下機能に影響を及ぼしている場合がある.嚥下機能の保持や誤嚥性肺炎などの疾病を予防するためには,嚥下機能への影響を考慮した薬剤選択を支援することが必要である.今回,嚥下機能に影響を及ぼす薬剤の投与状況と嚥下機能改善度に対する投与薬剤の影響を,高知大学医学部附属病院において,嚥下リハビリテーション(以下,嚥下リハ)を施行した脳卒中急性期患者を対象としてレトロスペクティブに調査した.対象患者55 人中,37 人(67.3%)の患者に嚥下機能に影響を及ぼす薬剤が投与されていた.その内訳は,嚥下機能を改善させ...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 17; no. 1; pp. 60 - 67
Main Authors 小野川, 雅英, 岩村, 健司, 土居, 奈央, 兵頭, 政光, 中平, 真矢, 高橋, 朝妃, 西窪, 加緒里, 石田, 健司, 吉岡, 三郎, 宮村, 充彦, 平田, 歩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 30.04.2013
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
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ISSN1343-8441
2434-2254
DOI10.32136/jsdr.17.1_60

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Summary:高齢者では,基礎疾患の治療に対し,多種の薬剤を継続して投与しているケースが多く,それらの薬剤が嚥下機能に影響を及ぼしている場合がある.嚥下機能の保持や誤嚥性肺炎などの疾病を予防するためには,嚥下機能への影響を考慮した薬剤選択を支援することが必要である.今回,嚥下機能に影響を及ぼす薬剤の投与状況と嚥下機能改善度に対する投与薬剤の影響を,高知大学医学部附属病院において,嚥下リハビリテーション(以下,嚥下リハ)を施行した脳卒中急性期患者を対象としてレトロスペクティブに調査した.対象患者55 人中,37 人(67.3%)の患者に嚥下機能に影響を及ぼす薬剤が投与されていた.その内訳は,嚥下機能を改善させる薬剤14 人(25.5%),嚥下機能を低下させる薬剤16 人(29.1%),両薬剤併用7人(12.7%)であった.降圧薬が投与されていた患者において,誤嚥性肺炎のリスクを低減させるアンジオテンシン変換酵素阻害薬と,その作用のないアンジオテンシン受容体拮抗薬の使用患者の割合は後者が4.6 倍高値であったことなど,嚥下機能に対する影響を考慮した薬剤選択が必要な症例も認められた.また,意識レベルの低下した症例が多く認められ,抗精神病薬・抗コリン薬の使用に際しては,その選択や投与量を考慮する必要があると考えられた.一方,嚥下機能に及ぼす投与薬剤の影響について検討を行ったところ,嚥下機能を改善させる薬剤を投与している群は,他の群に比べ嚥下リハ開始時の嚥下機能が高い傾向が認められた.また,嚥下機能を低下させる薬剤を投与している群は,他の群に比べ嚥下リハ終了時の嚥下機能が低い傾向が認められた.また,嚥下機能を低下させる薬剤を服用している群における誤嚥性肺炎の発症率は,他の群に比べ高い傾向が認められた.以上のことから,今後,嚥下障害患者個々の病態に応じた薬剤の選択や使用方法に薬剤師が積極的に関与し,患者QOL の向上を目指す必要があると考える.
ISSN:1343-8441
2434-2254
DOI:10.32136/jsdr.17.1_60