下顎歯肉癌術後に発症した壊疽性膿皮症の1例

壊疽性膿皮症(PG)は原因不明のまれな,急速進行性の潰瘍性皮膚疾患である。PGの初期症状は,術後創部感染と似ているため,診断が困難である。今回われわれは,口腔癌術後に生じたPG症例を経験したので報告する。 患者は72歳女性で,下顎歯肉癌に対して胸三角筋部皮弁(D-P皮弁)による再建を伴う根治手術を行った。術後6日目に発熱,下痢とD-P皮弁挿入部周囲の顎下部皮膚の発赤,び慢性腫脹,接触痛ならびに皮弁挿入部からの排膿を認めた。この時点で,術後創部感染と診断した。抗菌薬の変更,デブリードメントとドレナージにもかかわらず,術後13日目には病変は患側頸部全般に拡がり,周囲に紅斑と青紫色の穿掘性境界を伴う...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 30; no. 1; pp. 15 - 22
Main Authors 岩井, 聡一, 飯井, 孝年, 今井, 智章, 墨, 哲郎, 太田, 嘉幸, 中澤, 光博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2018
日本口腔腫瘍学会
Subjects
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ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.30.15

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Summary:壊疽性膿皮症(PG)は原因不明のまれな,急速進行性の潰瘍性皮膚疾患である。PGの初期症状は,術後創部感染と似ているため,診断が困難である。今回われわれは,口腔癌術後に生じたPG症例を経験したので報告する。 患者は72歳女性で,下顎歯肉癌に対して胸三角筋部皮弁(D-P皮弁)による再建を伴う根治手術を行った。術後6日目に発熱,下痢とD-P皮弁挿入部周囲の顎下部皮膚の発赤,び慢性腫脹,接触痛ならびに皮弁挿入部からの排膿を認めた。この時点で,術後創部感染と診断した。抗菌薬の変更,デブリードメントとドレナージにもかかわらず,術後13日目には病変は患側頸部全般に拡がり,周囲に紅斑と青紫色の穿掘性境界を伴う有痛性の壊死性潰瘍が認められた。皮膚科に対診し,PGが強く疑われた。術後15日目よりプレドニゾロンとミノサイクリンの投与を開始し,数日で顕著な改善が得られた。皮膚生検では,好中球を主体とする著明な炎症性細胞浸潤が認められたが,細菌の存在は明らかではなかった。以上の臨床的および組織学的所見はPGの診断基準を満たすものであった。 口腔顎顔面外科の手術においても,PGは術後合併症として念頭におくべき疾患である。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.30.15