ベトナムにおける臨床薬剤師を介して行う服薬支援ツールを用いた医薬品の適正使用推進に関する取り組み

目的  国立国際医療研究センター病院薬剤部では、ベトナムの診療、教育、研究の中心的な役割を担っている医療機関であるBach Mai hospital(BMH)の薬剤部と様々なプロジェクトを実施してきており、現在は医薬品の適正使用を目指した臨床薬剤師業務についての技術支援を行っている。  2019年度は、日本製薬工業協会とともにBMHの臨床薬剤師を対象に、患者教育による医薬品の適正使用を目的とした研修事業を計画し実践した。研修は、患者集団指導の実践および患者向け服薬支援ツールの作成を活動目標とした。今回、BMHの患者の服薬アドヒアランスの向上や副作用の早期発見を目的として、より患者満足度の高い患...

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Published in国際保健医療 Vol. 36; no. 1; pp. 11 - 24
Main Authors 寺門, 浩之, 瀬戸, 恵介, 柴田, 有希子, 池田, 彩佳, 奥, 沙耶佳, 坂本, 治彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本国際保健医療学会 2021
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ISSN0917-6543
DOI10.11197/jaih.36.11

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Summary:目的  国立国際医療研究センター病院薬剤部では、ベトナムの診療、教育、研究の中心的な役割を担っている医療機関であるBach Mai hospital(BMH)の薬剤部と様々なプロジェクトを実施してきており、現在は医薬品の適正使用を目指した臨床薬剤師業務についての技術支援を行っている。  2019年度は、日本製薬工業協会とともにBMHの臨床薬剤師を対象に、患者教育による医薬品の適正使用を目的とした研修事業を計画し実践した。研修は、患者集団指導の実践および患者向け服薬支援ツールの作成を活動目標とした。今回、BMHの患者の服薬アドヒアランスの向上や副作用の早期発見を目的として、より患者満足度の高い患者集団指導の実践および服薬支援ツールの改良につなげるため、研修受講後のBMH薬剤師による患者集団指導を受けた患者および作成した服薬支援ツールを読んだベトナムの患者を対象に2つのアンケート調査を実施した。方法  BMHに入院している糖尿病患者のうち、次の条件に該当した患者を対象にそれぞれ全て選択形式のアンケート調査(半定性半定量)を実施した。①臨床薬剤師による糖尿病患者に対する集団指導を受けた患者(調査は、集団指導受講直前に糖尿病治療薬や低血糖症状に関する患者理解度についてアンケート調査を実施し、集団指導受講直後に同じアンケート調査を実施した。)②服薬支援ツールを配布された糖尿病患者のうちツールを読んだ患者(ツールの満足度に関するアンケート調査を退院時に実施した。)結果  アンケート調査の結果より、①BMHの薬剤師による患者指導後、薬の作用機序についての理解度、低血糖に関する知識を問う設問に対し、全ての設問において理解度の向上が認められた。また、②服薬支援ツールに対する満足度についても、80%以上の患者が各項目についてほぼ理解できた、または、よく理解できたと回答した。結論  日本で研修を受講したBMHの薬剤師が行なった患者集団指導により、ベトナム人患者の薬に関する理解度の改善が認められた。また、アンケートの結果より、作成した服薬支援ツールは、ベトナム人患者にとって理解しやすいものになっていることが明らかとなった。医薬品の適正使用推進という観点から、患者への医薬品の適切な情報提供は、患者の医薬品の適正使用のみならず、臨床成績の向上につながるものと考える。また、継続的に実施していくことが必要であり、恒常的な情報提供体制の構築が望まれる。
ISSN:0917-6543
DOI:10.11197/jaih.36.11