上大静脈症候群を発症した下顎歯肉扁平上皮癌の1例

上大静脈症候群(以下SVCS)は,上大静脈(以下SVC)の閉塞によって引き起こされる症候群であり,重篤なオンコロジーエマージェンシーである。SVCSの原因として,縦隔部の悪性腫瘍が多いとされているが,特に一般的なのは肺癌であり,口腔癌からの発症はまれである。われわれは,下顎歯肉癌の鎖骨上窩リンパ節転移によってSVCSを発症した症例について報告する。 77歳,女性。下顎歯肉癌T2N0M0にて下顎辺縁切除術と肩甲舌骨筋上郭清術を行った。原発巣手術から4年後に同側のレベルⅣ領域に転移リンパ節を認めた。腫瘍部分には総線量50Gyの緩和照射を行った。放射線照射から約半年後,突然顔面,上肢の浮腫と嗄声,咳...

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Published in日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 32; no. 2; pp. 57 - 61
Main Authors 安陪, 由思, 楠川, 仁悟, 篠﨑, 勝美, 中村, 守厳, 喜久田, 翔伍
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 2020
日本口腔腫瘍学会
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ISSN0915-5988
1884-4995
DOI10.5843/jsot.32.57

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Summary:上大静脈症候群(以下SVCS)は,上大静脈(以下SVC)の閉塞によって引き起こされる症候群であり,重篤なオンコロジーエマージェンシーである。SVCSの原因として,縦隔部の悪性腫瘍が多いとされているが,特に一般的なのは肺癌であり,口腔癌からの発症はまれである。われわれは,下顎歯肉癌の鎖骨上窩リンパ節転移によってSVCSを発症した症例について報告する。 77歳,女性。下顎歯肉癌T2N0M0にて下顎辺縁切除術と肩甲舌骨筋上郭清術を行った。原発巣手術から4年後に同側のレベルⅣ領域に転移リンパ節を認めた。腫瘍部分には総線量50Gyの緩和照射を行った。放射線照射から約半年後,突然顔面,上肢の浮腫と嗄声,咳,頭痛の出現を認めた。CTにて鎖骨下静脈と内頸静脈が腕頭静脈に合流する部位に存在する腫大した転移リンパ節を認め,同リンパ節によってSVCが圧迫されていた。ステロイドとグルセオールにて重篤な症状の一時的な改善を認めたが,SVCSの発症から47日後に自宅にて亡くなった。
ISSN:0915-5988
1884-4995
DOI:10.5843/jsot.32.57