細菌の生態学的種を考える

16S rRNA 遺伝子解析が導入される前の時代,土壌細菌研究者の多くは,分離菌株の分類学的位置づけがどのような生態的意味をもつかについて一度は考え悩むときがあったと思う.そのような時代の最初の頃に,栗原は「ecological species(生態学的種)の概念の確立」を説いた(1965年).2000年代に入り,遺伝子変異の観点から細菌のecotype(エコタイプ)や細菌種の見直しが盛んに議論されている.ここでは,まず栗原の考察を読み解き,Cohanが提唱する細菌の「エコタイプ」について解説するとともに,著者らが扱ってきた初成土壌(三宅島2000年噴火火山灰堆積物)に住みつく細菌の分析結果を...

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Published in化学と生物 Vol. 48; no. 10; pp. 688 - 694
Main Authors 佐藤, 嘉則, 太田, 寛行, 西澤, 智康, 藤村, 玲子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本農芸化学会 2010
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ISSN0453-073X
1883-6852
DOI10.1271/kagakutoseibutsu.48.688

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Summary:16S rRNA 遺伝子解析が導入される前の時代,土壌細菌研究者の多くは,分離菌株の分類学的位置づけがどのような生態的意味をもつかについて一度は考え悩むときがあったと思う.そのような時代の最初の頃に,栗原は「ecological species(生態学的種)の概念の確立」を説いた(1965年).2000年代に入り,遺伝子変異の観点から細菌のecotype(エコタイプ)や細菌種の見直しが盛んに議論されている.ここでは,まず栗原の考察を読み解き,Cohanが提唱する細菌の「エコタイプ」について解説するとともに,著者らが扱ってきた初成土壌(三宅島2000年噴火火山灰堆積物)に住みつく細菌の分析結果を紹介して,細菌の生態学的種について考える話題を提供する.
ISSN:0453-073X
1883-6852
DOI:10.1271/kagakutoseibutsu.48.688