minor ABO不適合骨髄移植後の正常同種凝集素および糖転移酵素の変化

同種造血幹細胞移植(同種BMT)は白血病や重症再生不良性貧血などの難治性血液疾患に対する根治療法として確立され, 近年その症例数は急速に増加しつつある. 同種BMTの移植予後と関連して, HLA抗原の適合性が重要であることは非血縁者間BMTの推進を目的としたHLA登録に基づく骨髄バンクの設立の経緯からも明らかである. 一方, ABH抗原の適合性は臨床上重視されていない. それは, ドナー由来の血球と存在するレシピエント固有の抗A, 抗B同種凝集素との間での移植時および生着後に生じる血液型不適合溶血性副作用に対して, 理に適った予防処置を行えばABO不適合BMTの実施は可能で, その無病生存率の...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 6; pp. 877 - 882
Main Authors 菅野, 直子, 皆見, 啓子, 小幡, 隆, 鈴木, 俊之, 岸野, 光司, 雨宮, 洋一, 中木, 陽子, 室井, 一男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 1997
日本輸血学会
Subjects
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ISSN0546-1448
1883-8383
DOI10.3925/jjtc1958.43.877

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Summary:同種造血幹細胞移植(同種BMT)は白血病や重症再生不良性貧血などの難治性血液疾患に対する根治療法として確立され, 近年その症例数は急速に増加しつつある. 同種BMTの移植予後と関連して, HLA抗原の適合性が重要であることは非血縁者間BMTの推進を目的としたHLA登録に基づく骨髄バンクの設立の経緯からも明らかである. 一方, ABH抗原の適合性は臨床上重視されていない. それは, ドナー由来の血球と存在するレシピエント固有の抗A, 抗B同種凝集素との間での移植時および生着後に生じる血液型不適合溶血性副作用に対して, 理に適った予防処置を行えばABO不適合BMTの実施は可能で, その無病生存率の成績にも大きな影響を与えないからである. このようなABO不適合BMTにおいて, 生着確認を目的とした赤血球キメリズムの経日的変化についての報告は多い. しかし, 生着した造血幹細胞から分化, 増殖したドナー由来の赤血球の末梢血への出現に伴っての正常同種凝集素(抗A, 抗B抗体)や糖転移酵素(A, Bトランスフェラーゼ)の変化については未だ充分に解明されたとはいえない1)2). そこで, 当院で行われた同種BMTで, 長期間の観察が可能であったminor ABO不適合移植の5症例について, 以下のような諸検討を行った. おもて試験で血液型がドナー型に変換した後に, 1)移植前のレシピエントの血液型抗原は完全に消失するか, 2)レシピエント血清中に移植前には存在しなかったドナー型の抗体が産生されるか, 3)レシピエント型の糖転移酵素が消失してドナー型の糖転移酵素が産生されるか, 4)レシピエントの糖転移酵素が消失した症例では, 酵素に対するインヒビターが産生されているかの4点について検討した.
ISSN:0546-1448
1883-8383
DOI:10.3925/jjtc1958.43.877