経管栄養チューブ挿入にともなう嚥下頻度の変化

【目的】持続的な経鼻胃経管栄養法は誤嚥性肺炎を増加させることが知られている.その肺炎の原因は,チューブを挿入していることにより胃食道逆流が生じ,逆流物を誤嚥することによる可能性が報告されている.しかしながら,肺炎を生じた全症例で胃食道逆流が認められるわけではない.このことは,チューブを留置された症例の誤嚥性肺炎には逆流以外の原因も関与している可能性を示すものである.チューブは常時嚥下誘発部位を刺激することになるため,反射性の嚥下活動に影響が生じ,唾液などの誤嚥を惹起する可能性が考えられる.本研究では,チューブの留置が反射性の嚥下活動に与える影響を明らかにするために,チューブ挿入時における反射性...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 9; no. 1; pp. 51 - 55
Main Authors 尾島, 麻希, 小谷, 泰子, 和田, 健, 佐々生, 康宏, 野原, 幹司, 舘村, 卓
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 30.04.2005
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
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ISSN1343-8441
2434-2254
DOI10.32136/jsdr.9.1_51

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Summary:【目的】持続的な経鼻胃経管栄養法は誤嚥性肺炎を増加させることが知られている.その肺炎の原因は,チューブを挿入していることにより胃食道逆流が生じ,逆流物を誤嚥することによる可能性が報告されている.しかしながら,肺炎を生じた全症例で胃食道逆流が認められるわけではない.このことは,チューブを留置された症例の誤嚥性肺炎には逆流以外の原因も関与している可能性を示すものである.チューブは常時嚥下誘発部位を刺激することになるため,反射性の嚥下活動に影響が生じ,唾液などの誤嚥を惹起する可能性が考えられる.本研究では,チューブの留置が反射性の嚥下活動に与える影響を明らかにするために,チューブ挿入時における反射性嚥下の頻度の検討を行った.【対象と方法】5人の健常成人女性を対象とした.被験者には安静を指示し,15分間を経過した後に8フレンチの経管栄養用チューブを右鼻孔から胃まで挿入した.挿入前の15分間と挿入後の60分間の反射性の嚥下活動が認められた回数を計測した.嚥下回数は舌骨上筋群の筋活動と喉頭挙上運動の視認に基づいて計測した.【結果】チューブ挿入直後の嚥下頻度(19-29回/5分)は,挿入前(8-18回/5分)と比較し,有意に増加した (Mann-Whitney検定,p<0.01).その後の嚥下頻度は挿入直後をピークに徐々に減少し,挿入40分後には5分間あたり1-15回となり,挿入前よりも有意に減少した (p<0.05).【結論】本研究の結果から,経管栄養チューブの留置は反射性の嚥下活動に影響を与えることが示された.
ISSN:1343-8441
2434-2254
DOI:10.32136/jsdr.9.1_51