世界と日本の都市気候の変遷と都市気候学の発達

都市気候や都市や集落の気候条件についての文献は紀元前にまでさかのぼる.その中でもマルクス・ヴィトルヴィウス (前75-26) の記述は詳細でかつ正しい.この論文はまず世界の都市気候学とそれが一部を構成している小気候学の発達史年表を編み, 2番目に日本のそれについて編んだ.そして3番目には時代ごとに変化の特徴をまとめた.その特徴は次のような項目にまとめられる. (i) 都市気候学の第1段階は永い先史時代の末, 19世紀になって始まった.これは, 19世紀がその黄金時代と言われる気候誌をより正確に記述するため, 観測所周辺の環境の影響を分析したところから始まったものである.都市温度 (今日の言葉で...

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Published in日本生気象学会雑誌 Vol. 27; no. 2; pp. 47 - 56
Main Author 吉野, 正敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本生気象学会 1990
Japanese Society of Biometeorology
Subjects
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ISSN0389-1313
1347-7617
DOI10.11227/seikisho1966.27.47

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Summary:都市気候や都市や集落の気候条件についての文献は紀元前にまでさかのぼる.その中でもマルクス・ヴィトルヴィウス (前75-26) の記述は詳細でかつ正しい.この論文はまず世界の都市気候学とそれが一部を構成している小気候学の発達史年表を編み, 2番目に日本のそれについて編んだ.そして3番目には時代ごとに変化の特徴をまとめた.その特徴は次のような項目にまとめられる. (i) 都市気候学の第1段階は永い先史時代の末, 19世紀になって始まった.これは, 19世紀がその黄金時代と言われる気候誌をより正確に記述するため, 観測所周辺の環境の影響を分析したところから始まったものである.都市温度 (今日の言葉ではヒートアイランド) は欧米の大都会においては19世紀末までに確認された. (ii) 第2段階は1927年に, ウィーンで都市内の気温分布を自動車を利用して詳しく測定するときから始まった.この時代の開始は日本ではわずか数年おくれただけである. (iii) 1950年代半ばに第3段階は始まったが, 以下のような特徴がある.a) 3次元構造の観測.b) リモートセンシングまたは航空写真の利用.c) 数値実験またはモデルによる計算.d) 大気汚染や小気候条件と関連をつけた分析や図化.e) 教科書・総合報告・文献目録などの刊行.f) 家屋密度, 粗度, 天空率, 人口などと関連した分析.g) エネルギー収支や水収支などの物理過程の研究.h) 発展途上国における都市気候研究.i) 再び深刻化した都市における環境問題の研究.
ISSN:0389-1313
1347-7617
DOI:10.11227/seikisho1966.27.47