ブラウン運動の解析に基づく単一粒子追跡法と顕微鏡電気泳動法によるコロイド複合体の解析

土壌中に見られるコロイド粒子の多くは凝集体の形成や高分子の吸着等の理由から多孔質構造をもつ複合体として存在する.これらの複合体の土壌・水中での振る舞いを理解するためには,その流体力学的特性と界面動電的特性を分析する必要があるが,動的光散乱法などに代表される実験的解析法はバッチ式に系全体の特性を出力するにとどまっており,多分散な系を構成する個々の粒子や複合体の流体力学的半径や粒子表面の高分子吸着層に関する情報を得ることは難しい.これらの測定上の問題に対して,著者らは顕微鏡下で直接観察を行うことで,個別のコロイドに対してブラウン運動や電気泳動現象を解析する手法(単一粒子追跡法)を開発・応用してきて...

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Published in分析化学 Vol. 61; no. 2; pp. 87 - 94
Main Authors 小林, 梓, 日下, 靖之, 足立, 泰久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本分析化学会 2012
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ISSN0525-1931
DOI10.2116/bunsekikagaku.61.87

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Summary:土壌中に見られるコロイド粒子の多くは凝集体の形成や高分子の吸着等の理由から多孔質構造をもつ複合体として存在する.これらの複合体の土壌・水中での振る舞いを理解するためには,その流体力学的特性と界面動電的特性を分析する必要があるが,動的光散乱法などに代表される実験的解析法はバッチ式に系全体の特性を出力するにとどまっており,多分散な系を構成する個々の粒子や複合体の流体力学的半径や粒子表面の高分子吸着層に関する情報を得ることは難しい.これらの測定上の問題に対して,著者らは顕微鏡下で直接観察を行うことで,個別のコロイドに対してブラウン運動や電気泳動現象を解析する手法(単一粒子追跡法)を開発・応用してきており,本稿ではモデルコロイド複合体に対する本手法の適用例を報告する.まず,コロイド複合体の一つのモデルとしてポリスチレンラテックス粒子からなる凝集体に対して,単一粒子追跡法及び電気泳動測定を行ったところ,凝集体の成長に伴い流体力学的等価径は増加する一方,凝集体の電気泳動移動度はそのサイズにほとんど依存しないことが明らかになった.両者の比較より,電場印加下では凝集体内部で電気浸透流が発生することにより,ほぼ素抜けの状態で流体が流れることが示唆された.次に,コロイド複合体の別モデルとして高分子電解質被覆粒子に対して同様の手法を適用することにより流体力学的・界面動電的挙動を評価したところ,粒子表面に吸着した高分子電解質層が数時間を経て減衰するという特異な動的挙動が明らかになった.
ISSN:0525-1931
DOI:10.2116/bunsekikagaku.61.87