次世代シークエンサーを活用したオミクス解析によるAspergillus fumigatus 病原因子探索

アスペルギルス症の主要な原因菌であるAspergillus fumigatus のゲノムが公開されてから15年が経とうとしている.ゲノム解読株(Af 293株)を基準とした病原因子解析が世界中の研究者によって進められ,感染機構に関して多くの知見がもたらされたことは論を俟たない.一方で,単一のゲノム解読株に依拠した病原因子解析が,実際のヒト感染における複雑な臨床的側面を説明しうるかについては議論の余地がある.したがって,臨床的観点から病原菌の振る舞いを詳細に理解することが,今後の感染微生物学における課題だと考えられる.当グループは近年,多数の臨床分離株を対象として遺伝的,生理的,感染病理的知見を...

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Published inMedical Mycology Journal Vol. 59; no. 2; pp. J35 - J40
Main Authors 渡辺, 哲, 高橋, 弘喜, 酒井, 香奈江, 亀井, 克彦, 五ノ井, 透, 萩原, 大祐, 豊留, 孝仁, 髙橋, (中口) 梓
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published Tokyo 日本医真菌学会 01.01.2018
Japan Science and Technology Agency
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ISSN2185-6486
2186-165X
DOI10.3314/mmj.18.005

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Summary:アスペルギルス症の主要な原因菌であるAspergillus fumigatus のゲノムが公開されてから15年が経とうとしている.ゲノム解読株(Af 293株)を基準とした病原因子解析が世界中の研究者によって進められ,感染機構に関して多くの知見がもたらされたことは論を俟たない.一方で,単一のゲノム解読株に依拠した病原因子解析が,実際のヒト感染における複雑な臨床的側面を説明しうるかについては議論の余地がある.したがって,臨床的観点から病原菌の振る舞いを詳細に理解することが,今後の感染微生物学における課題だと考えられる.当グループは近年,多数の臨床分離株を対象として遺伝的,生理的,感染病理的知見を集積することにより,上記課題の解決を目指した研究を開始している.本稿では,次世代シークエンサーを活用した臨床分離株の大規模遺伝子解析について,特に病原性,感染形態,薬剤耐性に焦点を当てて紹介する.われわれのアプローチは,病原菌の株単位に存在する遺伝的差異と表現型との連関解析に基づいたものであり,今後,基準株の解析のみからは得られない病原性に関する新しい知見がもたらされると期待される.
Bibliography:ObjectType-Article-1
SourceType-Scholarly Journals-1
ObjectType-Feature-2
content type line 14
ISSN:2185-6486
2186-165X
DOI:10.3314/mmj.18.005