ヒト好中球ケミルミネッセンス反応を誘起するFusobacterium nucleatum表層物質の特性と反応機構の解析
我々は以前に, ヒト好中球に対しケミルミネッセンス(CL)反応すなわち活性酸素を誘導する, Fusobacterium nucleatumの菌体表層物質(CSM)について報告した. 活性酸素は殺菌因子であるとともに細胞障害因子でもあると考えられている. 本研究ではCSMと好中球との反応機構を明らかにするために, 好中球から産生される活性酸素種, CSM中の活性酸素誘導因子およびその情報伝達経路について検索した. スーパーオキシドジスムターゼとアジ化ナトリウムによるCL阻害実験から, CSM刺激により好中球から産生されたスーパーオキシドの大部分は, ミエロペルオキシダーゼにより次亜塩素酸に変換さ...
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Published in | 日本歯周病学会会誌 Vol. 45; no. 3; pp. 215 - 228 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本歯周病学会
2003
日本歯周病学会 |
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ISSN | 0385-0110 1880-408X |
DOI | 10.2329/perio.45.215 |
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Summary: | 我々は以前に, ヒト好中球に対しケミルミネッセンス(CL)反応すなわち活性酸素を誘導する, Fusobacterium nucleatumの菌体表層物質(CSM)について報告した. 活性酸素は殺菌因子であるとともに細胞障害因子でもあると考えられている. 本研究ではCSMと好中球との反応機構を明らかにするために, 好中球から産生される活性酸素種, CSM中の活性酸素誘導因子およびその情報伝達経路について検索した. スーパーオキシドジスムターゼとアジ化ナトリウムによるCL阻害実験から, CSM刺激により好中球から産生されたスーパーオキシドの大部分は, ミエロペルオキシダーゼにより次亜塩素酸に変換されたことが示された. またCSMのCL刺激活性に及ぼす種々の糖および阻害剤の作用から, CSMと好中球の間にはマンナン感受性のレクチン様結合が存在すること, CSMの情報伝達にはホスファチジルイノシトール-3キナーゼ(PI3K)およびホスホリパーゼC(PLC)が関与したが, 三量体G蛋白質は関与しないことが明らかになった. CSMは蛋白質, リポ多糖体(LPS)およびその他の多糖体を含有しており, その中で活性酸素誘導因子の本体は分子量11kD蛋白質(CSM/11kD)であった. またLPSは蛋白質の活性を増強したが, その情報伝達にはCD14/Toll-like receptor4は関与していなかった. ブロッティング法による結合実験の結果, CSM/11kDは好中球の12kDおよび18kD膜蛋白質と結合した. 以上の結果から, F. nucleatum表層の11kD蛋白質とLPSが協調的に好中球に作用し, 細胞内のPI3KとPLCが活性化されて活性酸素を誘導することが示唆された. |
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ISSN: | 0385-0110 1880-408X |
DOI: | 10.2329/perio.45.215 |