赤血球前駆細胞に対する選択的培養法を用いた赤血球の分化とAおよびB抗原の発現について
赤血球膜の遺伝標識ABOシステムは, 1900年Landsteinerによって発見され以来多くの研究者によって, その亜型や変異型の存在も明らかにされ, その数は30を超える1). なお, 人類にとって最も重要なABOシステムは輸血学や人類遺伝学, 法医学などの分野に数多くの重要な知見を提供してきた. また, その血液型を決定するA型およびB型抗原決定基としての糖鎖構造も明らかとなった2). そのA型およびB型抗原物質はAおよびB転移酵素の作用によって生合成される二次的な遺伝子産物である. 近年, YamamotoらはA抗原を決定するA転移酵素をコードする相補的DNAのクローニングとその塩基配...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 39; no. 3; pp. 602 - 606 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
1993
日本輸血学会 |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0546-1448 1883-8383 |
DOI | 10.3925/jjtc1958.39.602 |
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Summary: | 赤血球膜の遺伝標識ABOシステムは, 1900年Landsteinerによって発見され以来多くの研究者によって, その亜型や変異型の存在も明らかにされ, その数は30を超える1). なお, 人類にとって最も重要なABOシステムは輸血学や人類遺伝学, 法医学などの分野に数多くの重要な知見を提供してきた. また, その血液型を決定するA型およびB型抗原決定基としての糖鎖構造も明らかとなった2). そのA型およびB型抗原物質はAおよびB転移酵素の作用によって生合成される二次的な遺伝子産物である. 近年, YamamotoらはA抗原を決定するA転移酵素をコードする相補的DNAのクローニングとその塩基配列の決定に成功し, それを手掛かりにA, BおよびO(H)転移酵素の塩基置換を明らかにした3)4). すなわち, A転移酵素とB転移酵素のcDNA間には7塩基置換と, 4アミノ酸置換を認めた. この転移酵素が共通の基質に型特異的な糖を転移することにより, A型抗原, B型抗原は生成される. また, O型遺伝子はA型遺伝子の一つの塩基欠失により, フレームシフトが起こり, 終止コドンが生じ, 糖転移酵素活性を持たなくなる. なお, A, B転移酵素は, A, Bそれぞれの抗原を発現する細胞から産生され, その産生細胞にのみ作用するのか, あるいは細胞外に分泌され, 他の細胞にも及ぶのか, そのいずれであるかはまだ明らかではない. 今回, 私達は赤血球系細胞におけるA, B転移酵素の産生およびA, B各抗原の発現メカニズムについて, Wadaら5)の開発した赤血球前駆細胞に対する選択的液体培養法を用いて検討をおこなったので報告する. |
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ISSN: | 0546-1448 1883-8383 |
DOI: | 10.3925/jjtc1958.39.602 |