運動・再受傷恐怖感に対するスポーツ理学療法

スポーツで怪我をすると、選手には身体的のみならず心理的な変化が生じる。怪我後の心理的な反応として、運動や再損傷に対する怖さが高まることが多い。その他、不安や抑うつ、いら立ち、自信低下なども生じる。これらの心理的反応は、怪我発生直後をピークに患部の回復に応じて軽減されることが一般的である。しかしながら一部の選手においては、運動や再損傷に対する怖さが軽減しない、あるいは一度軽減してもまた恐怖感が強くなってしまう事も事実である。運動・再受傷恐怖感の増加は患部の回復を妨げ、身体機能を低下させる要因となり、円滑なスポーツ復帰を阻害する。我々の研究チームでは、およそ6年前から膝前十字靱帯再建術後選手の心理...

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Published inJapanese Journal of Sports Physical Therapy Vol. 1; no. Supplement; p. S20
Main Author 廣幡, 健二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本スポーツ理学療法学会 2021
Japanese Society of Sports Physical Therapy
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ISSN2758-4356
DOI10.57495/jjspt.1.Supplement_S20

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Summary:スポーツで怪我をすると、選手には身体的のみならず心理的な変化が生じる。怪我後の心理的な反応として、運動や再損傷に対する怖さが高まることが多い。その他、不安や抑うつ、いら立ち、自信低下なども生じる。これらの心理的反応は、怪我発生直後をピークに患部の回復に応じて軽減されることが一般的である。しかしながら一部の選手においては、運動や再損傷に対する怖さが軽減しない、あるいは一度軽減してもまた恐怖感が強くなってしまう事も事実である。運動・再受傷恐怖感の増加は患部の回復を妨げ、身体機能を低下させる要因となり、円滑なスポーツ復帰を阻害する。我々の研究チームでは、およそ6年前から膝前十字靱帯再建術後選手の心理的側面に着目し、国際標準的な質問紙票(anterior cruciate ligament-return to sport after injury scale, ACL-RSI)の翻訳・異文化適応、 ACL-RSIスコアの経時的変化や関連する身体機能要因の分析、再建術後選手が運動・再受傷恐怖感を感じるシチュエーションの探索などの研究計画を実践してきた(Hirohata, KSSTA, 2020. Ohji Phys Ther Sport, 2021. Aizawa, OJSM, 2020. Ohji, APSMART, 2021)。その結果、再建術後選手の運動・再受傷恐怖感に関連する身体機能や競技中のシチュエーションが徐々に明らかになってきている。本シンポジウムでは、運動・再受傷恐怖感に対する代表的なアプローチを整理する。そして、我々のこれまでの研究で得られた知見を踏まえて、スポーツ障害・外傷後選手の運動・再受傷恐怖感に対する理学療法士の関わり方や今後の課題について議論していきたい。
ISSN:2758-4356
DOI:10.57495/jjspt.1.Supplement_S20