ポリプロピレン系材料の劣化と安定化における高次構造の役割

ポリプロピレン(PP)系材料の安定性は,高次構造の影響を大きく受けることが知られている.本研究では,顕微赤外分光法によってPP中の球晶構造や無機フィラーが安定化剤の働きや劣化伝播に与える影響について検討した.安定化剤はPPの球晶界面や球晶外部に偏在する傾向が見られ,偏在の規模は球晶サイズが大きくなるほど増加した.一方,劣化の進行は,力学的にも化学的にも弱い球晶界面に集中する傾向があり,球晶サイズが大きくなり界面が発達するほど劣化は加速した.無機フィラーを添加したPPコンポジットにおいては,接合の弱いフィラー/マトリックス界面から安定化剤の揮散が促進され,安定性が大きく低下することがわかった.こ...

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Published in高分子論文集 Vol. 70; no. 12; pp. 693 - 696
Main Authors 豊永, 匡仁, 寺野, 稔, 小林, 史紘, 後藤, 啓介, 谷池, 俊明, 片田, 一喜, 千葉, 響
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 高分子学会 2013
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ISSN0386-2186
1881-5685
DOI10.1295/koron.70.693

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Summary:ポリプロピレン(PP)系材料の安定性は,高次構造の影響を大きく受けることが知られている.本研究では,顕微赤外分光法によってPP中の球晶構造や無機フィラーが安定化剤の働きや劣化伝播に与える影響について検討した.安定化剤はPPの球晶界面や球晶外部に偏在する傾向が見られ,偏在の規模は球晶サイズが大きくなるほど増加した.一方,劣化の進行は,力学的にも化学的にも弱い球晶界面に集中する傾向があり,球晶サイズが大きくなり界面が発達するほど劣化は加速した.無機フィラーを添加したPPコンポジットにおいては,接合の弱いフィラー/マトリックス界面から安定化剤の揮散が促進され,安定性が大きく低下することがわかった.このように,PP中に存在する界面はいずれも安定化剤の分散性や保持性の低下をもたらし,劣化の起点となると結論される.
ISSN:0386-2186
1881-5685
DOI:10.1295/koron.70.693