臨床データ利用における個人非特定化に潜む危険性 イニシャルは非特定化のために有効か?
緒言 医療機関が取り扱う情報は機密度やプライバシー度が高いため,その情報が漏れることで患者の社会的な不利益や差別に繋がる可能性を持っている1).2005年4月1日に『個人情報の保護に関する法律(以下,個人情報保護法とする)』1,2)が施行された.このことにより,患者自身の個人情報保護に対する意識が高まることが予想される.また,同法が国会で成立する際の付帯決議において,医療,金融・信用,情報通信の3分野は特に個人情報の適正な取り扱いを確保すべき分野と指定された.したがって,医療機関には個人情報保護に対する積極的な取り組みが求められている.臨床試験を行う際には,医療機関内だけではなく製薬企業など他...
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Published in | 医療薬学 Vol. 33; no. 3; pp. 245 - 250 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人日本医療薬学会
2007
日本医療薬学会 |
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ISSN | 1346-342X 1882-1499 |
DOI | 10.5649/jjphcs.33.245 |
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Summary: | 緒言 医療機関が取り扱う情報は機密度やプライバシー度が高いため,その情報が漏れることで患者の社会的な不利益や差別に繋がる可能性を持っている1).2005年4月1日に『個人情報の保護に関する法律(以下,個人情報保護法とする)』1,2)が施行された.このことにより,患者自身の個人情報保護に対する意識が高まることが予想される.また,同法が国会で成立する際の付帯決議において,医療,金融・信用,情報通信の3分野は特に個人情報の適正な取り扱いを確保すべき分野と指定された.したがって,医療機関には個人情報保護に対する積極的な取り組みが求められている.臨床試験を行う際には,医療機関内だけではなく製薬企業など他の施設とも患者の情報を共有しなければならない.そのため,患者情報を医療機関から外へ持ち出す際には,患者氏名をイニシャル化する等により外部からの容易な個人特定を防止する対策がとられている.『製薬企業における個人情報の適正な取り扱いのためのガイドライン』3)では,「市販後調査(現在は,製造販売後調査)では患者情報は匿名化されたものを入手しているため個人情報には該当しない」との記載がある. |
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ISSN: | 1346-342X 1882-1499 |
DOI: | 10.5649/jjphcs.33.245 |