ADL 維持向上等体制加算病棟における肝細胞癌患者のフレイル悪化の要因

【目的】フレイルは肝細胞癌(HCC) 患者において重要な予後予測因子である.当院では消化器内科病棟でADL 維持向上等体制加算(ADL 加算) を算定し,入院患者のフレイル予防改善に取り組んでいる.これまで我々はADL 加算の導入によりHCC 患者のフレイルが改善することを明らかにしたが,フレイル悪化の要因は不明であった.本研究の目的は,ADL 加算病棟に入院したHCC 患者のフレイル悪化の要因を明らかにすることである.【方法】本研究は2019 年1 月~2021 年1 月に当院消化器内科病棟に入院したHCC 患者242 名を対象とした後ろ向き観察研究である.フレイル評価はliver frai...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2022; p. 24
Main Authors 牛島, 茂樹, 広田, 桂介, 松瀬, 博夫, 川口, 巧, 橋田, 竜騎, 原, 瑞帆, 松下, 淑子, 岡田, 晃代, 神谷, 俊次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2022
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2022.0_24

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Summary:【目的】フレイルは肝細胞癌(HCC) 患者において重要な予後予測因子である.当院では消化器内科病棟でADL 維持向上等体制加算(ADL 加算) を算定し,入院患者のフレイル予防改善に取り組んでいる.これまで我々はADL 加算の導入によりHCC 患者のフレイルが改善することを明らかにしたが,フレイル悪化の要因は不明であった.本研究の目的は,ADL 加算病棟に入院したHCC 患者のフレイル悪化の要因を明らかにすることである.【方法】本研究は2019 年1 月~2021 年1 月に当院消化器内科病棟に入院したHCC 患者242 名を対象とした後ろ向き観察研究である.フレイル評価はliver frailty index (LFI) を用いた.ADL 加算病棟での理学療法士業務として,定期的なADL 評価やフレイル評価に加えて,フレイル予防改善を目的とした自主的な運動や身体活動を患者に指導した.また,病棟カンファレンスに参加し,多職種や患者・家族への情報共有を図った.さらに,必要な患者に対しては疾患別リハビリテーションを実施し,看護師と協力して集団運動療法を週に1 回実施することで身体活動の機会を設けた.入院時と退院時におけるLFI をWilcoxon の符号付順位検定にて比較した.LFI が不変あるいは低下した患者をフレイル維持改善群,LFI が増加した患者をフレイル悪化群とし,両群の患者背景をWilcoxon の順位和検定にて比較した.また,フレイル悪化に関連する要因を決定木解析にて検討した.さらに,転倒あり群と転倒群の患者背景をWilcoxon の順位和検定にて比較した.【結果】年齢の中央値は78歳であり,男女比は,女性85名/男性159名であった.LFI によるフレイル判定はrobust :18.2%,pre-frail :59.5%,frail :22.3% であった.LFI は入院時と比較して,退院時に有意な改善を認めた(3.80 vs.3.73, p=0.0004).フレイル維持改善群とフレイル悪化群の割合は62.0% :38.0% (150 名: 92 名) であった.両群間の患者背景は,全ての項目で有意差を認めなかった.決定木解析により,入院中のフレイル悪化に関連する第一分岐因子として入院中の転倒が同定され,入院中に転倒した患者の71.4% にフレイル悪化を認めた.対象者242 名のうち,転倒あり群は7 名,転倒群は235 名であった.年齢,性別,HCC に対する治療内容,在院日数は両群間に有意差を認めなかった.一方,入院時のPS は転倒あり群が転倒群と比較して有意に不良であり,BI も転倒あり群が転倒群よりも有意に不良であった,フレイル判定では,転倒あり群のpre-frail/frailの割合が,転倒群と比較して有意に高かった.さらに,Standing test for Imbalance and Disequilibrium (SIDE) では,転倒あり群において,よりバランス能力が低いLevel 0,1,2a の割合が転倒群と比較して有意に高かった.【結論】ADL 加算病棟に入院したHCC 患者の38.0%にフレイルの悪化が認められた。入院中のフレイル悪化に最も関わる要因は転倒であり,入院時にPS 不良,ADL 制限,フレイル,バランス能力低下の特徴を有する患者は転倒に伴うLFI 悪化のハイリスクと考えられた.【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則を遵守して実施された.また,本研究は久留米大学臨床研究センターの承認を受けている( 承認番号19020).本研究に関して開示すべき利益相反はない.
Bibliography:O-08
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2022.0_24