早期癌治療・ALTA療法同時施行後4ヵ月経過し遺残癌との鑑別に難渋した直腸壁内膿瘍の1例

80歳男性.大腸内視鏡検査で下部直腸に有茎性ポリープと内痔核を指摘され,経肛門的ポリープ切除術と内痔核硬化(ALTA)療法を施行された.病理組織検査から高分化腺癌,pT1b,水平・垂直断端陽性と診断されたため,外科的手術の適応と判断された.造影CT検査では直腸前壁から前立腺との間に造影効果を伴う辺縁不整な病変がみられた.同部位の穿刺吸引細胞診で悪性所見を認めなかったが,局所遺残を否定できないため,腹腔鏡補助下腹会陰式直腸切断術を施行した.前立腺左側と直腸前壁間に硬い線維性病変を認め,病理組織検査では直腸壁内膿瘍の診断であった.ALTA療法後の直腸壁内膿瘍は比較的稀ではあるが,筋層内の薬剤浸透に...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 73; no. 1; pp. 13 - 18
Main Authors 真鍋, 達也, 中房, 祐樹, 永吉, 絹子, 永井, 俊太郎, 藤田, 逸人, 佐伯, 潔, 中村, 雅史, 小田, 義直, 貞苅, 良彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2020
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.73.13

Cover

More Information
Summary:80歳男性.大腸内視鏡検査で下部直腸に有茎性ポリープと内痔核を指摘され,経肛門的ポリープ切除術と内痔核硬化(ALTA)療法を施行された.病理組織検査から高分化腺癌,pT1b,水平・垂直断端陽性と診断されたため,外科的手術の適応と判断された.造影CT検査では直腸前壁から前立腺との間に造影効果を伴う辺縁不整な病変がみられた.同部位の穿刺吸引細胞診で悪性所見を認めなかったが,局所遺残を否定できないため,腹腔鏡補助下腹会陰式直腸切断術を施行した.前立腺左側と直腸前壁間に硬い線維性病変を認め,病理組織検査では直腸壁内膿瘍の診断であった.ALTA療法後の直腸壁内膿瘍は比較的稀ではあるが,筋層内の薬剤浸透に関連する合併症は重篤なものもあり注意を要する.また,内痔核と腫瘍性病変が併存する場合には悪性腫瘍との鑑別が困難となりうるため,治療のタイミングを熟慮しなければならない.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.73.13