腹腔鏡手術後に診断した悪性卵巣甲状腺腫の1例

成熟奇形腫に卵巣甲状腺腫が合併する頻度は約2.7%とされるが悪性卵巣甲状腺腫の合併は稀である.悪性卵巣甲状腺腫の好発年齢は40〜60代である.今回われわれは成熟奇形腫の甲状腺成分が乳頭癌へ悪性転化した1例を経験したので報告する.症例は56歳女性.1妊1産.54歳に閉経.発熱があり近医を受診し,卵巣腫瘍が指摘されたため当院を紹介受診した.骨盤MRIでは両側卵巣の成熟奇形腫が疑われた.左卵巣には35mmの多嚢胞性腫瘤を認め,脂肪成分と,一部T2強調像で著明な低信号を呈する部位があり,成熟奇形腫の他にBrenner tumorや,内膜症性嚢胞が鑑別にあがった.腫瘍マーカーは正常であった.両側卵巣成熟...

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Published in昭和学士会雑誌 Vol. 83; no. 1; pp. 57 - 62
Main Authors 池本, 舞, 丸山, 大介, 宮村, 知弥, 藤井, 良将, 堀, 祥子, 宮崎, 知哉, 森岡, 幹, 中山, 健, 佐々木, 康, 小林, 友紀, 板倉, 桃子, 中尾, 紗由美, 田内, 麻依子, 水谷, あかね
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 昭和大学学士会 2023
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ISSN2187-719X
2188-529X
DOI10.14930/jshowaunivsoc.83.57

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Summary:成熟奇形腫に卵巣甲状腺腫が合併する頻度は約2.7%とされるが悪性卵巣甲状腺腫の合併は稀である.悪性卵巣甲状腺腫の好発年齢は40〜60代である.今回われわれは成熟奇形腫の甲状腺成分が乳頭癌へ悪性転化した1例を経験したので報告する.症例は56歳女性.1妊1産.54歳に閉経.発熱があり近医を受診し,卵巣腫瘍が指摘されたため当院を紹介受診した.骨盤MRIでは両側卵巣の成熟奇形腫が疑われた.左卵巣には35mmの多嚢胞性腫瘤を認め,脂肪成分と,一部T2強調像で著明な低信号を呈する部位があり,成熟奇形腫の他にBrenner tumorや,内膜症性嚢胞が鑑別にあがった.腫瘍マーカーは正常であった.両側卵巣成熟奇形腫の診断で腹腔鏡下両側付属器摘出術を実施した.病理診断は,右卵巣腫瘍が良性粘液性嚢胞腺腫を合併した成熟奇形腫であったが,左卵巣腫瘍は成熟奇形腫に合併した甲状腺乳頭癌であった.3か月後にStaging Laparotomyを実施し手術進行期Ⅰa期の診断とした.術後の後療法は行わず経過をフォローしている.今回われわれは,腹腔鏡下手術後に悪性卵巣甲状腺腫と診断した症例を経験した.40歳以上の卵巣成熟奇形腫の症例には悪性転化を認めることがあるため,術前に良性卵巣腫瘍が疑われても,特に充実性成分を認める場合は悪性卵巣腫瘍の可能性を念頭に入れ治療をする必要があると考えられた.
ISSN:2187-719X
2188-529X
DOI:10.14930/jshowaunivsoc.83.57