E型肝炎ウイルス日本土着株に感染し発症したと推定される急性肝炎の1例

従来本邦ではE型肝炎は輸入感染症として軽視されがちであったが, 最近本邦を含む非流行地からの国内発症例の報告が相次いでおり, 我々も1例経験したので報告する. 症例は62歳男性. アルコール歴・ビタミン剤と生薬の服用歴あるも, 海外渡航歴・輸血歴・動物の飼育歴はなく, 特記すべき性交渉歴もなかった. 2000年11月初旬より全身倦怠感・褐色尿・微熱・食思不振を訴え, 職場の健康管理室を受診. 急性肝炎の疑いで同年11月21日に当科外来を紹介され, 同日入院となった. 入院時には全身倦怠感・皮膚及び眼球結膜黄染・軽度肝腫大・肝逸脱酵素上昇を認め, 急性肝炎と診断した. 安静のみで経過観察したが,...

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Published in肝臓 Vol. 44; no. 2; pp. 80 - 84
Main Authors 三代, 俊治, 岩田, 滉一郎, 平林, 寧子, 高橋, 和明, 渡邉, 尚子, 中尾, 國明, 太田, 裕彦, 松本, 正廣, 松本, 裕子, 籏原, 照昌
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2003
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.44.80

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Summary:従来本邦ではE型肝炎は輸入感染症として軽視されがちであったが, 最近本邦を含む非流行地からの国内発症例の報告が相次いでおり, 我々も1例経験したので報告する. 症例は62歳男性. アルコール歴・ビタミン剤と生薬の服用歴あるも, 海外渡航歴・輸血歴・動物の飼育歴はなく, 特記すべき性交渉歴もなかった. 2000年11月初旬より全身倦怠感・褐色尿・微熱・食思不振を訴え, 職場の健康管理室を受診. 急性肝炎の疑いで同年11月21日に当科外来を紹介され, 同日入院となった. 入院時には全身倦怠感・皮膚及び眼球結膜黄染・軽度肝腫大・肝逸脱酵素上昇を認め, 急性肝炎と診断した. 安静のみで経過観察したが, 劇症化あるいは遷延・慢性化することもなく, 約20日間で軽快退院となった. 入院時より第29病日まで血清HEV-RNAが持続陽性で, 且つ第57病日の回復期血清中にHEV抗体を認めたことより, E型急性肝炎と診断した. 本患者より分離されたHEV株(JRA 1)のゲノム塩基配列の特徴に鑑みて, 本症例は「日本に土着化したHEV株」に感染して発症した急性肝炎であると考えられた.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.44.80