未破裂脳動脈瘤 われわれの治療方針
近年の脳ドックをはじめとした神経放射線診断能の向上と, 老年人口の増加から, 未破裂脳動脈瘤が発見される機会が多くなってきた, しかし, その手術適応はいまだ論議の多いところである. われわれは未破裂脳動脈瘤に対して, 手術によるmortality/morbidityを最小限にしつつ, 積極的に動脈瘤破裂を未然に防ぐことを基本戦略として, 以下のごとく適応を決定してきた. 1)75歳以下の症例で, 重篤な神経脱落症状がなく, 有意な自立生活を過ごしているもの. 2)悪性腫瘍, 重症糖尿病, 肝不全, 腎不全, 冠不全など, 全身麻酔と手術侵襲により病勢の悪化が懸念される症例を除外する. 3)根...
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Published in | 脳卒中の外科 Vol. 26; no. 4; pp. 248 - 252 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
1998
日本脳卒中の外科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0914-5508 1880-4683 |
DOI | 10.2335/scs1987.26.4_248 |
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Summary: | 近年の脳ドックをはじめとした神経放射線診断能の向上と, 老年人口の増加から, 未破裂脳動脈瘤が発見される機会が多くなってきた, しかし, その手術適応はいまだ論議の多いところである. われわれは未破裂脳動脈瘤に対して, 手術によるmortality/morbidityを最小限にしつつ, 積極的に動脈瘤破裂を未然に防ぐことを基本戦略として, 以下のごとく適応を決定してきた. 1)75歳以下の症例で, 重篤な神経脱落症状がなく, 有意な自立生活を過ごしているもの. 2)悪性腫瘍, 重症糖尿病, 肝不全, 腎不全, 冠不全など, 全身麻酔と手術侵襲により病勢の悪化が懸念される症例を除外する. 3)根治手術は原則的に, 顕微鏡下でクリッピングを行い, その時期は頭蓋内疾患や先行する脳神経外科手術から3週以降に行う. 4)虚血発症例で, バイパス術が必要であれば, 動脈瘤根治術と一期的に浅側頭動脈-近位M2(STA-M2)バイパスを行う. 5)症候性の内頸動脈海綿静脈洞部動脈瘤や頭蓋内巨大内頸動脈瘤に対しては, 伏在静脈を用いた外頸動脈-近位M2 high flowバイパスに内頸動脈の近位部遮断あるいはトラッピングを行う. 本研究では, われわれの外科戦略を評価し, 今後の未破裂動脈瘤の手術適応を考察することを目的に, 手術予後をmortality/morbidityの有無とその原因を中心に検討したので報告する. |
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ISSN: | 0914-5508 1880-4683 |
DOI: | 10.2335/scs1987.26.4_248 |