高CA19-9血症を呈したS状結腸憩室症の1例

症例は66歳,男性.主訴は腹部膨満感および下痢.近医にてS状結腸狭窄を指摘され,手術目的に当科紹介となる.大腸内視鏡検査では,S状結腸に多発する憩室を認め,同部位は約15cmにわたり著明に狭窄していた.入院時の血液検査では,血清carbohydrate antigen(CA)19-9値(基準値37U/ml)が1894.0U/mlと異常高値を示した.消化管,膵胆道系の悪性腫瘍の合併を疑い,精査を施行するもS状結腸憩室症による腸管狭窄以外に異常所見を認めなかった.S状結腸憩室症による腸管狭窄および同部位に潜在する結腸癌の可能性から手術適応と判断し,腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行した.摘出標本の病...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 72; no. 9; pp. 2324 - 2327
Main Authors 古畑, 智久, 平田, 公一, 西舘, 敏彦, 伊東, 竜哉, 山口, 洋志, 沖田, 憲司, 計良, 淑子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2011
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.72.2324

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Summary:症例は66歳,男性.主訴は腹部膨満感および下痢.近医にてS状結腸狭窄を指摘され,手術目的に当科紹介となる.大腸内視鏡検査では,S状結腸に多発する憩室を認め,同部位は約15cmにわたり著明に狭窄していた.入院時の血液検査では,血清carbohydrate antigen(CA)19-9値(基準値37U/ml)が1894.0U/mlと異常高値を示した.消化管,膵胆道系の悪性腫瘍の合併を疑い,精査を施行するもS状結腸憩室症による腸管狭窄以外に異常所見を認めなかった.S状結腸憩室症による腸管狭窄および同部位に潜在する結腸癌の可能性から手術適応と判断し,腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行した.摘出標本の病理組織学的所見は,粘膜下層の線維化,固有筋層の肥厚を認めたが,腫瘍性病変は存在しなかった.CA19-9免疫染色では,陰窩上皮に陽性細胞を認めた.術後血清CA19-9値は経時的に低下し,術後約4カ月後には29.7U/mlまで減少したことから術前の異常高値は,S状結腸憩室部からのCA19-9産生によるものと考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.72.2324