大動脈閉鎖バルーンが有効であった外傷性脾破裂の1例

腹腔内動脈性出血の緊急止血には大動脈閉鎖バルーン(以下IABO)が有効である.一方でIABOは非出血部を含めた広範囲の血流を遮断するため,安易に長時間の阻血を行うべきではない.今回われわれは開腹直前にIABOを利用することが有効であった症例を経験した.症例は72歳,女性.自転車乗車時に溝へ転落し,左側腹部を強打した.前医で肋骨骨折と脾破裂を指摘され,当院に紹介された.来院時に出血性ショック状態であり,FASTにてダグラス窩,モリソン窩,脾周囲に液体の貯留を認めた.救急処置室で右鼠径部からIABOを挿入し,大動脈血流の迅速な遮断が可能な状態でCTを施行した.脾損傷III型と診断し,開腹脾摘術を行...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 71; no. 5; pp. 1305 - 1308
Main Authors 浅野, 博昭, 村岡, 孝幸, 佃, 和憲, 三好, 新一郎, 原田, 昌明, 内藤, 稔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2010
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.71.1305

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Summary:腹腔内動脈性出血の緊急止血には大動脈閉鎖バルーン(以下IABO)が有効である.一方でIABOは非出血部を含めた広範囲の血流を遮断するため,安易に長時間の阻血を行うべきではない.今回われわれは開腹直前にIABOを利用することが有効であった症例を経験した.症例は72歳,女性.自転車乗車時に溝へ転落し,左側腹部を強打した.前医で肋骨骨折と脾破裂を指摘され,当院に紹介された.来院時に出血性ショック状態であり,FASTにてダグラス窩,モリソン窩,脾周囲に液体の貯留を認めた.救急処置室で右鼠径部からIABOを挿入し,大動脈血流の迅速な遮断が可能な状態でCTを施行した.脾損傷III型と診断し,開腹脾摘術を行った.皮膚切開後開腹直前にIABOにて大動脈血流を遮断した.一時止血を得て,良好な視野下に脾摘が可能であった.大動脈血流遮断時間は19分間で,術後合併症を認めなかった.開腹直前の大動脈遮断により疎血時間の短縮化が可能であった.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.71.1305